イラクサ(蕁麻)で織られた麻織物

イラクサ(蕁麻)の繊維から生まれる布。イラクサ(蕁麻)の採取・苧引き・糸積みについて


古くから、衣類の原料やあみなわなどを編む繊維などに使用されてきた植物にイラクサ(蕁麻いらくさ)があります。

イラクサ(蕁麻いらくさ)はイラクサ科の植物で、世界中で40属、50種以上を数えるといわれますが、繊維として利用されるものは主に、イラクサ属(ミヤマイラクサ、ムカゴイラクサ、エゾイラクサ)、カラムシ属(ナンバンカラムシ、カラムシ、コアカソ)などで、まれにミズ属のミズ類も用いられました。

カラムシ畑,福島県昭和村

カラムシ畑,福島県昭和村,Qwert1234, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons,Link

このうち、カラムシ属のナンバンカラムシ(学名:Boehmeria nivea var. nivea)は、いわゆる苧麻ちょまで、栽培される麻織物の主原料となっていました。

カラムシ属のカラムシ(俗称、野生カラムシ)はあみ類に用いられ、コアカソは衣類用に主に使用されました。

イラクサ属のなかでは、ミヤマイラクサが本州で最も使用されてきて、ムカゴイラクサやエゾイラクサは北海道や樺太からふとで多く使用されてきました。

イラクサ属、カラムシ属、ミズ属共に、湿っていて水分量が多い土地を好んで自生し、特にイラクサは日陰で肥沃ひよくな林間や沢辺の湿地に株立って自生します。

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イラクサ(蕁麻)の採取・苧引き・糸積み

イラクサ(蕁麻いらくさ)の採集方法は、採集の時期が7月〜9月の場合は、まずイラクサの根元を強く踏みつけながらくきを倒します。

付近の株を同じように踏み倒しておくと、ある程度踏み倒し終わる頃には、くきは次第にしんなりとし、チクチクするとげ状の毛である刺毛しもうもやわらかくなり、あまり痛くなくなります。

その後、葉を落としてくきを抜くか、刈り取って根本近くを折り、揉むようにして裂け目をつけ、指を差し込んで表皮をはぎぎとります。

はぎぎとった皮は、適当な束にして持ち帰ります。

家に持ち帰ったイラクサはほとんどの場合、すぐに水に浸して苧引おひきを行います。

苧引おひきとは、緑色の表皮を除き、繊維利用に必要な靭皮じんぴ(外皮のすぐ内側にある柔らかな部分)部分のみにする作業で、大麻・カラムシの場合と全く同じ作業です。

苧引おひき板と苧引おひき専用の金具を用いて不要な硬い繊維を選別し、表皮をこそげ取ると、薄緑色の光沢のあるとなります。

は乾燥して、保存されます。

苧を糸に積む

糸にするには、を指先で細く裂き、口に含んでツバで湿らせながらってつなげていきながら糸をんでいきます。

糸がめたら、糸車や紡錘ぼうすい(古語では「つむ」と呼ぶ)などを用いて、経糸、緯糸それぞれに必要なりをかけて、かせの状態にします。

以上が、一般的な糸のとり方となります。


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