染色・草木染めにおける消石灰(しょうせっかい)


消石灰しょうせっかい(Slacked lime)は、白色に乾燥したアルカリ性粉末で、水酸化カルシウムの慣用名です。

水酸化カルシウムは、化学式 Ca(OH)2 で表されるカルシウムの水酸化物です。

消石灰しょうせっかいは、生石灰せいせっかい(酸化カルシウム)に適量の水を加えて処理(消化)したものです。

消石灰しょうせっかいは、水にわずかに溶け、水溶液は石灰水とよばれ、強アルカリ性となります。

空気中の二酸化炭素を吸収して炭酸カルシウムになるため、消石灰しょうせっかいを保存する際にはできる限り密閉することが、品質を保つうえでは大切です。

染色・草木染めにおける消石灰(しょうせっかい)

消石灰しょうせっかいは、染色・草木染めにおいて媒染ばいせんに使用されたり、藍染の液のPH調整に活用されます。

媒染(ばいせん)における消石灰

水に消石灰を混ぜ、石灰が沈澱ちんでんした上澄うわずみ液は、ミネラルを含むアルカリ性の液体となります。

この液体は、草木染めなどの植物を用いた染色において媒染剤としての役割を果たします。

藍染における消石灰

藍染において、消石灰のアルカリは非常に重要な役割を果たしています。

天然の藍染の液は、微生物が発酵はっこうすることによって、青い色素が液中に溶け出し、染められるようになります。

藍液の中で活動する菌はアルカリ性の状態を好むため、藍の液を作る(建てる)際や、維持管理する際のPH調整のために、消石灰が使用されます。

泥染における消石灰

奄美大島においてテーチキ、テカチキなどと呼ばれる車輪梅しゃりんばいは、大島紬を染める染料として使用されてきました。

大島紬おおしまつむぎは、「泥染どろぞめ」で有名ですが、先に車輪梅で染めてから、泥の中の鉄分を利用することで、黒みを帯びた茶色である黒褐色こっかっしょくに媒染されるのです。

車輪梅しゃりんばいの樹皮や材木、根っこにはタンニンや茶褐色の色素が含まれており、車輪梅しゃりんばいを煮出して、色素の抽出を効率的に行うために石灰を加えたりします。

防染糊(ぼうせんのり)に消石灰を加える

染色、とりわけ型染めにおいて必要不可欠なのが、防染糊ぼうせんのりです。

防染糊ぼうせんのり型糊かたのり)の作り方としては、もち(もち米の粉)と米糠こめぬかを主成分として、これに石灰せっかいと塩を混ぜたものが基本的に使用されます。

防染糊ぼうせんのりに石灰を加える理由としては、石灰はのり粘度ねんどを高めて防染力を増し、のりの乾燥を早める効果があります。

石灰を加えていくと、のり黄褐色おうかっしょくに変化していくので、色の変化も確認しながら加えていきます。

関連記事:染色・型染めにおける防染糊(ぼうせんのり)の作り方


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