黄連(学名Coptis japonica Makino)は、キンポウゲ科オウレン属で常緑多年草の薬用植物です。
葉には光沢感があり、セリに似ており、早春に根茎から芽を出し、3〜4月ごろに根元から高さ10cmほどの花茎を出し、数個の白い花を付けます。
地下茎はやや太く、中は黄色で横にのび、たくさんの根を出します。
9〜11月頃に、根茎を採取して細い根を除いて乾燥させたものが生薬の「黄連」です。
黄連の語源は、根茎が節状に連なり、横断面が鮮やかな黄色であることから「黄連」と呼ばれる説があります。
染色・草木染めにおける黄連(おうれん)
黄連は、薬用としての効能が知れていましたが、染草としても利用されていました。
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養老令の注釈書として、9世紀中頃(貞観年間(859年~877年頃成立)に編纂された『令集解』には、「穴云。此進黄連者。染草料也。」とあり、この頃から染色にも用いられていたことが考えられます。
黄連(おうれん)の染色方法
黄連の黄色い根茎は、直接染料としても染まりがよく、色彩は美しい黄色になります。
1kgの絹糸を染めるために、100gの黄連の根茎を使用した場合の染色方法は以下のような流れです。
①細かく刻んだ黄連の根茎100gを10リットルの水に入れて熱し、沸騰してから30分間熱煎して煎汁をとり、染液にする
②染液に1kgの糸を浸して綛をよくかえしながら、染めムラにならないように注意する。
③染液が冷えたら堅く絞って天日の元乾燥させる
④染液にまだ色素が残っていれば、再び染液を熱して乾いた染糸を再び浸す
⑤2番液も取れるので、濃く染める場合は中干しした糸を浸して、染液が冷えるまで浸す
③3番液も取れるが、薄くなるので、別の糸の下染などに活用する
黄連の薬用効果
黄連の根茎を採取して細い根を除き、乾燥させたものが生薬の「黄連」です。
黄連は、中国最古の薬物書である『神農本草経』では「王連」として上品に収載され、古くから消炎、止血、瀉下(下痢)などの薬として使用されてきました。
『神農本草経』の特徴として、1年の日数と同じ365種類の植物・動物・鉱物が薬として集録されており、人体に作用する薬効の強さによって、上薬(120種類)中薬(120種類)下薬(125種類)というように薬物が3つに分類されている点があります。
上薬・中薬・下薬は、上品・中品・下品ともいいますが、王連(黄連)は、上品に収録されています。
日本では奈良時代に中国から黄連の知識が伝わり、自国に生育するセリバオウレン(学名Coptis japonica Makino)と同じものと考え活用されてきました。
江戸時代には、栽培も行われ、中国に輸出されるようになります。
黄連の成分としては、ベルベリン、パルマチン、コプチシ、マグノプロリンなどが含まれています。
主な薬効として、苦味健胃薬(苦みによって胃の機能を促進させる生薬のこと)や止瀉薬(下痢止めの薬)などが挙げられます。
【参考文献】『月刊染織α1985年8月No.53』