筒描(つつがき)は、「筒引」、「筒糊」、「糊描」などとも呼ばれてきました。
柿渋紙を漏斗状に丸め、先端につけた口金の穴から、中に入れた防染用の糊をケーキのホイップクリームを押し出すようなイメージで出しながら文様(模様)を描いていきます。
その後、藍甕に浸して布を染め、糊を落とすと、自由で伸び伸びとした線が現れます。
目次
文様染めにおける筒描き(つつがき)の技法
筒描きは、すべて一枚ずつの手仕事で、作品は職人の技量が反映されたものとなります。
熟練した職人は、下絵は大まかに当たりをつける程度で一気に文様を描いていたため、線と図柄は自由で大胆な雰囲気に昇華していきました。
筒描きに用いる筒には、布製と紙製があり、形は円錐形をしています。
中に入れた糊を細い口から絞り出して描きますが、糊が出る先端を丈夫にしておくために、筒金(口金)を筒の形に沿って内側から固定します。
筒金の先の太さを調節することで、描く糊の線の細さが変わってきます。
筒描き,Tsutsugaki,azumaya, azumaya, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons,Link
筒描き(つつがき)の工程
筒描きの工程としては、まず以下のような流れとなります。
①【下絵描き】露草を原料とした青花で、下絵を描く
②【筒描き・筒引き】白抜きする部分を防染糊(伏せ糊)で描く
③【色指し】紺地以外の色染めを刷毛で行う
④【糊置き】乾燥した色染め部分に防染糊を置く
⑤乾燥が十分でないと、糊が腐り、防染力が弱くなるため、糊置きした上に鋸屑(ひき粉)を振りかけて、乾かす
⑥【地染め・下染め】布を伸子にかけ、紺地部分を藍で浸し染にしていく
⑦【地入れ】染めた後、藍の染着を良くするために、生大豆をすりつぶした豆汁を刷毛で引く
⑧【中染め〜仕上げ】藍染めの回数を重ねて染め、濃くしていく
⑨お湯に浸けておくことで糊を落としやすくしてから、洗って糊を落とす
伏せ糊(ふせのり)
伏せ糊は、染色した部分を筒描き用の糊で、糊伏せし、地色を染める時に防染の役割を果たすもので型付け糊よりも粘度の高い糊を用います。
伏せ糊の作り方は、型付け糊と同じですが、モチ粉とヌカの比率を6対4や7対3とモチ粉の比率を高くし、蒸す時間を長くします。
先端に筒金を装着した糊筒に伏せ糊を入れて、ケーキのホイップを塗るように防染したい部分を覆っていきます。
覆った部分を指先で糊の表面をならしていき、気泡が入って泡状になっている部分を丁寧につぶしていきます。
ひき粉
布に糊を置いたら、木屑やおがくずから作ったひき粉を篩にかけながら表面にかけていき、余分なひき粉はほうきで払い落とします。
ひき粉は、染色の際に糊同士がぶつかってはがれるのを防いだり、糊が流れたりするのを防いだり、引き染めする場合には糊がくずれて地染め部分にくっついてしまうのを防止する効果があります。
防染糊が裸のままであると外部からの刺激で問題が起きるリスクが高いので、ひき粉で表面をカバーすることで、防染糊を補強するのです。
筒描き作品の特徴
藍染の筒描きによって染色された作品は、嫁ぐ女性を祝い、その幸せへの祈りを込められた嫁入り道具として用いられた布団地や、実家の保証を約束した家紋入りの風呂敷などが多く作られました。
描かれる文様には、先人たちが残してくれた物語や意味がそれぞれに込められていると言えます。
生まれてくる子どもの健康を願う気持ちが込められた、おむつや子負い帯や湯上げなど、孫ごしらえの品があります。
「孫ごしらえ」とは「嫁いだ娘に赤ちゃんが授かった知らせを聞くと、里の親はかねて糸を紡ぎ手織りして準備していた白木綿を、近所の紺屋に持参して孫ごしらえの注文をする」という慣わしがありました。
庶民的な衣料において筒描きの文様染めが発展したのは、藍と木綿の普及がなくてはならないものでした。
【参考文献】『娘の幸せを祈る 藍染筒描の世界』