茄子(ナス)は、江戸時代のことわざである「一富士二鷹三茄子」のひとつに含まれ、これに関連して多くのデザインに用いられてきました。
「一富士二鷹三茄子」は初夢に見ると縁起の良いとされるものの順で、「富士」は日本一の山、「鷹」は威厳のある鳥、「茄子」は生すや成すを意味し、物事の発展するさまを言い表わしています。
デザインにおける茄子(ナス)・茄子文(なすもん)

茄子(なす)・茄子文(なすもん)がデザインされた伊勢型紙
江戸時代後期の絵絣には、茄子と大根のような野菜類も表現され、その庶民的な風情が好まれていました。
伊勢型紙にも茄子の文様(茄子文)が彫られ、中型や小紋など、さまざまなデザインが表現されてきました。

茄子(なす)・茄子文(なすもん)がデザインされた伊勢型紙
茄子紺(なすこん)
「茄子紺」と呼ばれる茄子のような色合いは、大正時代に流行色となっていました。
茄子紺という藍染された色名(色合い)は、夏野菜のナスのように紫味をもった紺色を表します。
昔ながらの天然の藍染は、何回も染め重ねることで濃くなっていきますが、黒に近い色まで染めていくと赤味を帯びてきます。
ただ、天然藍で赤味が出るほど染めるのには大変手間がかかるため、藍染である程度染めてから、蘇芳などの赤色が染まる染料で茄子紺がよく表現されていたようです。