器物とは、狭義では「うつわもの」ですが、広義には道具類や生活用具一般を表します。
器物を文様化(模様化)した器物文は、数々の道具や生活用具をモチーフとし、その種類は非常に多くあります。
デザインにおける器物文(きぶつもん)
器物文は、種類としては分野によってさまざま挙げられます。
宗教に関係した用具・・・輪宝や羯磨、御幣など
武具・・・弓や矢、兜、刀、鞍、鐙、轡など
遊戯具・・・カルタ、蹴鞠、貝合せなど
楽器類・・・笛や太鼓、琴など
文具類・・・色紙や短冊、筆墨、調度など
建具類・・・御簾・衝立、障子、屏風、几帳、額など
食器類・・・徳利、盃、椀、膳など
厨房具・・・鍋、釜、五徳など
染織品における器物文
染織品においては、安土桃山時代における開放的で人間謳歌な気風が文様(模様)にも表現され、武将たちの衣類には器物をモチーフとした斬新なデザインがなされ、異国趣味も盛り込まれました。
華やかさが発展を見せた小袖においても、色紙や短冊、扇などの伝統的な題材が多く用いられました。
江戸時代には、身近な生活具をデザインに用い、経済的に実力を持った町人たちが主体となってさまざまな模様が展開されました。
王朝の物語の一面を表現したり、和歌や能楽の世界を表現するためにある器物を象徴的に用い、互いに教養を確かめ合うという風潮もあったようです。