梶の木(学名:Broussonetia papyrifera)は、クワ科コウゾ属の落葉高木で、単に梶(かじ)、または構(こう)などとも呼ばれます。
梶の枝からとれる繊維は、和紙の原料としても用いられてきました。
そんな梶の枝と葉をかたどった模様(文様)は、「梶の葉文(かじのはもん)」として古くからデザインに用いられてきました。
デザインにおける梶の葉文(かじのはもん)
平安時代には、乞巧奠(七夕祭)を修する際に必ず梶の葉が用いられ、これに詩歌を書き、二つ星(織姫星と彦星)を祭ったとされます。
梶の葉文を衣服の模様(文様)に用いた様子は、平安時代末期の絵巻物である『伴大納言絵詞』にみえます。
室町時代に鎌倉を拠点に、関東を支配した関東府(鎌倉府)に関する故実書である『殿中以下年中行事(鎌倉年中行事)』には、室町時代の七夕祭の際に、将軍の式服に梶の葉文が用いられたとあります。
江戸時代に作られた帷子である「帷子白麻地七夕文様」のように七夕に関連して梶の葉が表現されている染織品が作られており、古くからの伝統を受け継いだデザインとなっています。
梶の皮は、古代神祭の際の神への供え物(幣帛)に用いられ、葉は食器として神事に用いられました。
そのため、梶の模様(文様)は神官の間で使用され、紋章にもなりました。
諏訪大社の「諏訪梶の葉紋」をはじめ、多くの神社の神紋に梶の葉が用いられています。
例えば、「立ち梶の葉」は日本の家紋である「梶紋」の一種で、徳島県にある忌部神社などが用いています。