サイザル麻(学名:Agave sisalana)は、キジカクシ科リュウゼツラン属の植物、およびそれから採取した繊維を表します。
「サイザル麻」と名付けられているように「麻」の繊維の一つとされますが、いわゆるアサ科アサ属の「アサ」とは植物学的に別種です。
目次
サイザル麻(sisal hemp)とは?
サイザルという名前は、メキシコのユカタン半島の港「sisal」から麻として積み出されたことが由来です。
スペインには、1785年にサイザル麻が移植され、その後は世界各国に栽培が広まり、カリブ諸島やブラジル、タンザニアを中心とするアフリカ各国、アジアなどで栽培されました。
特に盛んになったアフリカのタンザニア産のものは、「タンガニーカシサルヘンプ」というなど、それぞれの土地の名前をつけて呼ばれることがあります。
サイザル麻は、化学繊維の普及する以前には多く栽培されていたのです。
サイザル麻は、成長すると2mを超えるほどの大きさになります。
サイザル麻の特徴と用途
長い葉から採れるサイザル麻の特徴としては、以下のようなものが挙げられます。
サイザル麻の特徴
- 繊維の強度が高く丈夫
- 水に強く、水中で腐食しにくい
- 光沢がある
- 柔軟性や弾力性が高い
- 湿気を含むと収縮し、乾燥すると伸張する
- 摩耗に強い
- 繊維が硬いため、衣類を作るのには適さない
サイザル麻の用途
サイザル麻の用途としては、上記に挙げた特徴のように、繊維の強度があり、水に強く、水中で腐食しにくいため、船舶用のロープや漁網などの麻ロープとして広く活用されてきました。
繊維を使用して、カーペットを作ったり、バッグや物を入れる袋にも活用されました。
紙の原料(製紙用)としても、フィルターや紙幣などに使用されます。
サイザル麻に似ている繊維、エネケン
サイザル麻に似ている繊維であるエネケン(学名Agave fourcroydes)は、中米原産でリュウゼツラン亜科の一種です。
エネケン繊維は、ユカタン半島などでは「緑の黄金(green gold)」とも呼ばれていました。
エネケンは、パイナップルに似た短い茎がある作物の上部から、灰色がかった緑色で、堅く多肉質(葉や茎など、植物の一部が肥大し、肉厚になる性質)の葉が成長します。
サイザル麻と同様に、1780年ごろから、スペインにエネケンでできた製品が持ち出されるようになり、1811年には輸出品として、ハンモックや袋物、敷物や荷鞍(馬や牛の背に据えて荷物を載せたりするための道具)など600万ドル規模の取引がなされていました。