羊毛は、毛を採取するその部位によって品質や性質が変わってきます。
胴体の側面で、肩のあたりがもっとも良質とされるウールがとれるのです。
公益社団法人畜産技術協会の記事「目的にあった羊毛の扱い」に非常にわかりやすい図と説明がありますので、ここに引用します。
目次
羊毛の採取する部位による品質・性質の違い
首(ネック)・・・毛先が荒れていたり、夾雑物がかなり入り込んでいる。繊維自身は比較的細く、質が一定していない
肩(ショルダー)・・・フリースの中では一番良質のウールで、毛の質も一定している
脇(サイド)・・・ショルダーに次ぐ良いウール。いくらか毛足が短いが、比較的均一なウール
背中(バック)・・・風雨、日光に晒され毛先が荒れている。ゴミ、埃の混入がかなりある。肩毛よりも強さがある
お尻(ブリッジ)・・・フリースの中で一番繊維が太く、毛足もかなり短い。ケンプやヘアーが含まれることもありフェルト化しやすい
尾(テイル)・・・非常に粗く、剛毛(kemp)がある
腹(ベリー)・・・毛が細く短く、強度は弱い
引用:目的にあった羊毛の扱い
形の部分が、一番良質なウールが採取できる部分とされています。
品種、性別、個体による品質に違いを選毛する
羊毛は、一年に1〜2回刈り取られ(剪毛)され、手順によって刈り取ると羊の毛は根元で絡みあっているため1枚につながったフリースと呼ばれる形で刈り取られます。
一枚のコート状になった刈り取った原毛(フリース)は、汚れのひどい周辺部分を取り除かれ、巻いてロール状にしてから保管されます。
毛を採取する部位だけでなく、品種による毛の品質のも大きく変わり、性別による個体差もあります。また羊の育つ環境、それぞれの個体によっての差がもちろん出てきます。
その品質に応じて、仕分け(選毛)されるのです。
洗毛と化炭、カーディング
選毛された毛を洗い、化炭処理という方法で、脂肪分や付着している植物のゴミなどを除去します。
化炭処理とは、羊毛を希硫酸につけてから高温で乾燥させ、植物繊維を取り除きます。羊毛は酸性に強いけれど、植物性の物質は酸に弱いので焦げて炭となるため、植物繊維を除去できます。
その後、カーディングと呼ばれる工程で油剤を添付しながら、繊維をほぐし束ねてスライバーと呼ばれるロープ状の繊維の束にしていきます。
ゴミを取り除いたロープ状のスライバーを、巻き上げて西洋こま(スピントップ)のような形にするので、これをトップと言います。
トップの状態で染めることをトップ染めといい、均一できれいに染色できます。その他、用途に応じて染色方法が選ばれ、糸染め、生地染め(反染め)がされます。
その後、スライバーを機械にかけながら、細くしていき、糸を紡績していきます。
梳毛糸(そもうし)と紡毛糸(ぼうもうし)
ウールは紡績方法によって、大きく梳毛糸と紡毛糸に区別されます。
比較的長く、品質的にも良い繊維は梳毛紡績され、比較的短い繊維や、梳毛紡績の過程で副産物として生じるくず毛や反毛を混ぜ合わせた原料は紡毛紡績されます。
梳毛糸は、繊維が平行に並んでいて太さが均一で、撚りもしっかりしていて硬くて強い上、表面がなめらかです。織り上げられた織物は密度が高く、強くて表面もなめらかで光沢感が出ます。スーツ地、ニット地、ドレープ地などによく使われます。
紡毛糸は、梳毛糸とは逆に、繊維の方法が一定ではなく、撚りも甘いので織り上げられた織物の密度は低く、厚地で重いもの多いです。
紡績の工程は、梳毛糸に比べると比較的簡単であり、繊維が完全な平行状態になっていないので、糸の表面は毛羽立ちが目立ちます。
したがって、梳毛糸よりも強度がなく、外見も見劣りしますが、縮充性に富んでいるため、軽い服地やコート地、毛布、カジュアルウェアなどによく使われます。
一般的には、梳毛糸よりも紡毛糸の方が安価ですが、すべての面で紡毛糸が劣っているわけではありません。
手織りの分野では、紡毛糸が好まれたりする場合があったりと用途によって適した使い方があります。
各品種の羊毛の寸法
羊の品種によって毛の品質が大きく変わると上記で述べましたが、具体的には繊維の太さ、長さや巻縮数が変わってきます。
代表的な品種の羊毛繊維の採寸は、以下の図に表しています。
質番とは、羊毛1ポンドから長さ560ヤードの毛糸でできるカセ数(紡績可能性の基準)です。
ウールのような毛は、巻縮性があるといいますが、パーマがかかったように繊維1本1本が縮んで巻いているのです。
下記の表での巻縮数は、1インチあたりの程度を表しています。
よく聞かれるメリノ種は、繊維が細いことがよくわかります。繊維が細いことによって、上質なウールが採取できるのです。
参考文献:『21世紀へ、繊維がおもしろい』