立涌文は、「たちわきもん」ともいわれ、日本でも古くから使用されている代表的な文様(模様)のひとつです。
相対する二本の線の中間がふくれ、両端がすぼまった形の線が並列した柄となっています。
立涌文は、基本的な形は単純ですが、広く応用されながら模様表現されてきました。
デザインにおける立涌文(たてわくもん)

立湧文(たてわくもん),伊勢型紙
雲気(水蒸気)が立ち上がった状態に見立てたため、立涌文という名前があります。
立涌文のデザインにおいて、その気が立ち昇る様子や水が湧き立つ様から、繁栄や清浄(清らかさ)、吉兆などの意味があったともされます。
ふくらみを持った空間に、唐草風の雲や藤、波、唐花、忍冬文などのデザインが配されることも多いです。

立湧文(たてわくもん),伊勢型紙
パターンとしては、唐花や忍冬文が使用されることが多く、これが後に形が変わって「藤立湧」や「雲立湧」と呼ばれるものになります。

花立湧文(はなたてわくもん)
有職文様としては、女子の袿(女性が表着の中に着る衣服)や男子の指貫(裾を締める紐がついた袴)などに使用されました。

錐彫りされた伊勢型紙を使用して染められた立湧文(たてわくもん)
有職文様とは、平安時代以降の公家社会において装束や調度、輿車、建築などに用いられた伝統的な模様(文様)です。
16世紀中頃に成立したとされる『酒飯論絵巻』には、衣装の半身を異なった裂で仕立てた「片見替り(かたみがわり)」の立涌文の小袖を着た女性が描かれています。
高野山の持明院が所蔵する「浅井長政夫人像」の腰巻きにもみられます。

「浅井長政夫人像」,立涌文,Public domain, via Wikimedia Commons,Link
江戸時代には小袖や能装束などの染織品、陶磁器や漆器などの工芸品などにも表現されてきました。