染色・草木染めにおける冬青(そよご)。染色方法の一例について


冬青そよご(学名 Ilex pedunculosa)は、山梨県より西の本州、四国、九州の山地に生えている常緑樹で、実が美しいことから庭木としても植えられます。

雌雄異株で、6月ごろに小さな白い花が咲き、実は丸く熟すと紅色になります。

冬青そよごという名前の由来は、葉が風にゆれて、ザワザワ音をたてながらそよぐさまからきています。

Ilex pedunculosa fruit

冬青,Ilex pedunculosa,Alpsdake, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons,Link

染色・草木染めにおける冬青

冬青そよごは、9月10月ごろの緑葉を採取してから、すぐに煎じます。

冬場にとった葉の染色は、赤味が強いといわれます。

樹皮を使っても、葉と同じような染色効果があります。

灰汁媒染で黄色褐色や渋味のある赤色に染まり、鉄媒染では黒に染まります。

ミョウバン媒染で赤褐色せっかっしょく、酢酸アルミニウム、または塩化アルミニウムの媒染で、退紅色に染まります

昭和8年に出版された『日本固有草木染色譜』には、冬青そよごについて下記のような記述があります。

ふくら、ふくらもち即ち冬青なり。さやごとも言ふ。この葉にて布帛を染む、色赤し、さやご染と言ふ

古くから、冬青そよごは赤色を染められる材料として、実用化されていたことがわかります。

冬青の染色方法の一例

糸1kgに対して、緑葉1kgを鍋に入れて6リットルの水を加え、30分加熱して煎液を抽出し、3回まで同じように抽出します。(煎じた葉は再度使用する)

3回抽出した煎液を熱して、糸を浸し、20分ほど煮染した後、必ず一晩そのまま浸しておきます。

浸した糸をしっかり絞って、天日干しして乾かします。

糸が乾いたら、使用した煎液を再び加熱してから糸を浸し、再度絞って天日干しをして乾かします。再度浸して、天日で乾燥させます。

3回まで煎じた葉っぱを再度使用し、あと3回ほど(合計6回)抽出液を作り、染め重ねます。

さらに3回煎じた液を使って(合計9回)、染め重ねます。

最後に、濃い灰汁(ph12程度)4リットルに30分浸してからよく水洗いして乾燥させます。

以上の工程を、3、4回ほど繰り返すと(緑葉の量で3~4kg)濃い赤色が染まります。

冬青そよごで濃い色を染めるのには、非常に手間がかかります。


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