冬青(学名 Ilex pedunculosa)は、山梨県より西の本州、四国、九州の山地に生えている常緑樹で、実が美しいことから庭木としても植えられます。
雌雄異株で、6月ごろに小さな白い花が咲き、実は丸く熟すと紅色になります。
冬青という名前の由来は、葉が風にゆれて、ザワザワ音をたてながらそよぐさまからきています。
染色・草木染めにおける冬青
冬青は、9月10月ごろの緑葉を採取してから、すぐに煎じます。
冬場にとった葉の染色は、赤味が強いといわれます。
樹皮を使っても、葉と同じような染色効果があります。
灰汁媒染で黄色褐色や渋味のある赤色に染まり、鉄媒染では黒に染まります。
ミョウバン媒染で赤褐色、酢酸アルミニウム、または塩化アルミニウムの媒染で、退紅色に染まります
昭和8年に出版された『日本固有草木染色譜』には、冬青について下記のような記述があります。
ふくら、ふくらもち即ち冬青なり。さやごとも言ふ。この葉にて布帛を染む、色赤し、さやご染と言ふ
古くから、冬青は赤色を染められる材料として、実用化されていたことがわかります。
冬青の染色方法の一例
糸1kgに対して、緑葉1kgを鍋に入れて6リットルの水を加え、30分加熱して煎液を抽出し、3回まで同じように抽出します。(煎じた葉は再度使用する)
3回抽出した煎液を熱して、糸を浸し、20分ほど煮染した後、必ず一晩そのまま浸しておきます。
浸した糸をしっかり絞って、天日干しして乾かします。
糸が乾いたら、使用した煎液を再び加熱してから糸を浸し、再度絞って天日干しをして乾かします。再度浸して、天日で乾燥させます。
3回まで煎じた葉っぱを再度使用し、あと3回ほど(合計6回)抽出液を作り、染め重ねます。
さらに3回煎じた液を使って(合計9回)、染め重ねます。
最後に、濃い灰汁(ph12程度)4リットルに30分浸してからよく水洗いして乾燥させます。
以上の工程を、3、4回ほど繰り返すと(緑葉の量で3~4kg)濃い赤色が染まります。
冬青で濃い色を染めるのには、非常に手間がかかります。