ヒトの肌の色を決め、人種、性別、季節、身体の部位によってその違いを生み出すのは、メラニン(melanin)と血中のヘモグロビン(hemoglobin)が大きな要因となっています。
目次
メラニンがヒトの肌の色と髪色を決める
肌にはいくつかの色素がありますが、主に肌色を決めているのはメラニンであり、その色素が多いか少ないかによって肌の色が変わってきます。
メラニンは、ユーメラニン(eumelanin)とフェオメラニン(pheomelanin)の2種類に分けられます。
ユーメラニンは、やや黒みを帯びた濃い茶色(褐色)から黒色で、フェオメラニンは、黄色から赤色です。
肌の色だけでなく、髪の毛の色も、ユーメラニンとフェオメラニンが多いか少ないかによって決まっています。
日本人やアジア人に多い黒髪の場合は、ほとんどがユーメラニンです。
金髪はフェオメラニンが多く、ユーメラニンが少ないことによって特徴付けられます。
赤毛も金髪のようにフェオメラニンが多く、ユーメラニンは比較的少なく、混ざった形です。
私たちが「メラニン」と呼んでいるものは、ユーメラニンとフェオメラニンを一緒に表しているのです。
メラニンの役割
メラニンは、皮膚のガンなどを引き起こす有害な紫外線から、皮膚を守る重要な役割を担っています。
急激に日焼けをして、一時的に強い紫外線を浴びると、身体の防御機能が働き、メラニンを通常より多く生成します。
夏に日焼けをして肌が黒くなるというのは、このメラニンが増えた結果として、小麦色の肌となるのです。
夏の日焼けのように、外部環境に影響を受けることによって、メラニンの生成状況が変わるので、紫外線にあまり当たらない日々が続けば、肌色も元々生まれてきた色に戻ります。
ただ、急激に紫外線浴びたり、肌の回復力が遅い人の場合、メラニンの調整がうまくいかない細胞ができ、その結果、「シミ」として肌に残る可能性があるのです。
日焼け止めを使う理由としては、紫外線によるダメージから肌を守る効果が期待できるため、結果的にシミになる可能性を減らせるのです。
紫外線を防御するためのメラニン色素が少ない白人の方が、紫外線による肌色の変化が大きく、ダメージを受けやすい傾向があります。
黒人の濃い肌は、紫外線を遮断しやすいため、肌へのダメージを抑える働きがあります。
白人の方が、黒人よりも皮膚がんになりやすいとされているのは、肌の色が大きく関係しているのです。
紫外線の強い時期
気象庁は、紫外線が人体に及ぼす影響の度合いをわかりやすく示すために、紫外線の強さを指標化したUVインデックスという紫外線情報を提供しています。
上記のグラフは、2022年の1年間、つくば市における日最大値のUVインデックスの値のデータです。
3月ごろから紫外線量が増え始め、6月から9月あたりの紫外線量が年間を通して強いのがわかります。
上記のグラフは、2022年の1年間、東京都における日最大UVインデックスを月別に平均したものです。
このデータによると、7月が紫外線の強さのピークとなっていることがわかります。
5月から9月ごろまでは紫外線が強い時期ですが、秋冬の時期もしっかりと紫外線は届いています。
ヘモグロビンも肌色に影響を与える
メラニンだけではなく、血液中のヘモグロビンも、肌色を決めるもう一つの色素です。
ヘモグロビンの変化は、血管が拡張したり収縮する時や、血液量が変化することに連動しています。
血流の変化は、心理的要因、生理的要因、物理的要因、複合的な要因によって、複雑に変化しているのです。
徹夜明けであったり二日酔いの際に、自分の顔を鏡で見たときに顔色が悪かったという経験をしたことがある人はたくさんいるでしょう。
顔色がいつもと比べて悪いということは、疲労による生理的な要員による血液由来の肌色変化の場合がほとんどです。
つまり、体調によって血液量が変化しており、文字通り、顔の血色が悪くなるのです。
人前に立つ際に緊張して顔が赤くなったり、小学校時代にプールの授業でくちびるが青くなった経験がある人もいると思いますが、これらは外部の物理的要因によって体が勝手に血流の状態を変化させているためです。
ただ、血流の変化は一時的な場合が多いので、しばらく時間が経てばもとの状態に戻ることがほとんどです。
【参考文献】『色彩から歴史を読む』