蚕(家蚕)の繭から取ったままの糸を生糸(raw silk)と言います。
生糸を構成している一本の繊維は、2種のタンパク質からなります。
カイコの体内にある左右の絹糸腺からつくられた2本の「フィブロイン」タンパク質が、膠質の「セリシン(sericin)」と呼ばれるタンパク質に包まれた形になっています。
絹(シルク)のセリシンとは?
セリシン(sericin)とは、生糸の主成分である「フィブロイン」の外周を丸く包んでいるゼラチン様の硬たんぱく質の一種を表します。
セリシン(sericin)は、日本語の「絹膠」という言葉と同義語です。
セリシン(sericin)の語源はギリシャ語で中国を意味する「seres」で、→「serikon(中国の)絹の」→ラテン語の「sericum」を経由して、1842年に「中国の」、1886年に「絹の」という意味で文献に初出している「セリック(seric)」の名詞形です。
一般的に「絹(シルク)」といえば、セリシンを溶かして除去(精錬)した後のフィブロインだけのものを言います。
セリシンをどのように除去するか(除去の程度)を操作することで、風合いを微妙に変えることができます。
例えば、セリシンを残したままの生糸で織物にしてから精錬すると、セリシンが溶けたことによってできた空間によって、絹織物特有の柔らかい風合いを生むことができます。
セリシンを除去する方法
セリシンの除去の仕方には、せっけんや炭酸ソーダなどで精練液を作り、その中で煮沸してセリシンを溶かし、除去していく方法があります。
もともとよく行われていたセリシンを除去する方法としては、藁灰からとった灰汁などのアルカリ液での精錬です。
セリシンが除去された繊維は、練糸とも呼ばれます
絹糸の精錬(練り)には、樫のような広葉樹の灰汁ではアルカリが高すぎるので、古くから藁灰からとった灰汁が使用されていました。
全体の20%〜30%を占めるセリシンがほとんど溶けて除かれ、フィブロインだけが残ります。
藁灰で精錬した絹糸は、藍染の染まり具合が良いとも言われます。
精錬自体は、藁灰の灰汁を沸騰させて絹糸を1時間半から2時間煮た後、火を止めて2〜3時間放置するなどして精錬が行なわれていました。