「草木染め」という言葉は、日本の作家で染織家の山崎斌氏(1892年〜1972年)に命名されました。
1930年(昭和5年)、化学染料が普及してきたころ、天然染料は衰退の一途をたどっていきました。
「草木染め」という言葉は、古くから伝承されてきた染色方法を復興するにあたり、化学染料と区別するために名付けられたのです。
現在、草木染めという言葉の定義は、自然から得られる染料で染色することの総称として定着しています。
目次
植物染料とは
「植物染料」は、草木染めに使用する染料の一般的な呼称です。
合成染料が発明されるまで、世界中の衣類を染めたものは、植物を原料にしたものがほとんどでした。
合成染料の普及によって、染料と言えば合成染料ということになった結果、染料植物という言葉が作られたのです。
草木染めという言葉と同じように、植物だけではなく、実際は動物性や鉱物性の染料を含めた染料のことを総称して植物染料という言葉が一般的に使用されています。
実際に、動物性や鉱物性の染料のことを含めて使用する場合は、天然染料という言葉を使用した方が妥当ではあります。
草木染めの基本的な染色方法
染料の量は、染めるものの重さに対して、同量が目安となります。
水は、染料の重さの5倍から10倍の量を使用するので、例えば、染料が100gであれば、水は500ccから1リットルになります。
抽出し終えた染液の量は、染めるものの重さの20倍から40倍ほどが必要な目安となります。
媒染剤の量は、染めるものの重さの4〜5パーセントの重量が目安となり、溶かす水の量は考える必要は特にありませんが、染めるものがしっかりと浸かるほどは必要です。
素材と染色の関係
煮出して色素を抽出して染める草木染めの場合は、染まりやすいものとそうではない素材があります。
草木染めともっとも相性が良いのが、動物性の繊維であるシルクです。
ウールも染まりやすいですが、熱によって固まる可能性があるので、染色温度と時間の加減が必要になってきます、ウールは特に、染色前に加熱して媒染すると発色が良いです。
植物繊維を染める場合
藍染の場合は、綿と麻との相性が良いため染まりやすいのですが、いわゆる煮出して行う草木染めと相性がよくないので、非常に染まりづらいです。
現在では、染料店で濃染剤(カチオン化剤という界面活性剤の一種)を購入して下処理すれば、簡単に染められますが、古くはこのようなものはなかったので、人々は工夫して染めていました。
綿や麻に草木染めする場合には、タンニンやタンパク質、油分などで下地をつくることが大事になってきます。
例えば、インドでは牛乳やヤギの乳に、ザクロやミロバランの木の実を煮つめた液を混ぜて使用していました。
ミロバラン(myrobalan)は、シクンシ科で10m〜20m程の高さになる落葉樹で、インド木綿更紗の下地染めにその木の実が使われてきました。

Black Myrobalan,Rumi Borah~aswiki, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons,Link
タンニンを含んでいるため、金属イオンが付きやすくなるので、木綿や麻などの植物繊維も染まるようになります。ミロバランの液に浸してから、しっかりと絞り、天日の元でしっかりと乾燥させた後に、染色していきます。
日本では、大豆を水ですり潰した液体である呉汁が、草木染めをする繊維の下地としてよく用いられていました。
また、タンニンを含む五倍子で下染してから、染色する場合もあります。
タンニンをもともと含む染料であれば、木綿の素材でも比較的染まる場合もあります。