鴛鴦(オシドリ)は、雄の姿が特に美しく、多彩な羽根色や脇腹の銀杏羽(いちょうばね)、後頭部の冠羽(かんう)が特徴的です。
中国古代に、「君子万年(教養や徳の高い立派な人はいつまでも長生きであるということを表わした四字熟語)」を祝うめでたい鳥としてや、夫婦和合(夫婦円満)の象徴とされました。
日本でもこの思想を受け、二羽の鳥が翼を並べること(男女の仲睦まじい様子)のめでたさや翼の美しさをモチーフに、「鴛鴦文(おしどりもん)」として模様化(文様化)しました。
デザインにおける鴛鴦模様(おしどりもよう)・鴛鴦文(おしどりもん)
鴛鴦模様のデザインにおける古い染織品としては、正倉院宝物の「赤地鴛鴦唐草文錦大幡脚端飾」が有名です。
花から伸びた紐をくわえて向き合った鴛鴦が左右対称に描かれており、赤地の錦を表裏で用い、緑地の花模様の錦で縁取りされています。
平安時代以降の公家社会において装束や調度、輿車、建築などに用いられた伝統的な模様(文様)を有職文様と言いますが、一羽、あるいは二羽をまるい模様(円文)に図案化したものがあります。
16世紀の室町時代頃に作られた小袖である「白練緯地花鳥模様辻が花染(しろねりぬきじかちょうもようつじがはなぞめ)」には、描絵で燕子花や菊などの草花とともに、鴛鴦やウズラなどの鳥が赤系統の彩色で描かれています。
安土桃山時代の縫箔や江戸時代の小袖や能装束、名物裂などに作例が多く残っています。
江戸時代後期には、夫婦和合(夫婦円満)の理想像として、嫁入り衣装や夜着のデザインにも用いられました。