綛糸(かせいと)・綛揚(かせあげ)・綛染(かせぞめ)について


綛糸かせいととは、紡いだ糸を巻き取る道具である桛枠かせわく(綛枠)に糸を一定の回転巻いて枠から外し、その糸を束ねたものを表します。

単に、「かせ」ともいい、この方法や一つに束ねる分量は、糸の種類によって異なります。

綛揚(かせあげ)

糸を巻くための棒状のボビン(紡錘ぼうすい)に巻かれた糸を、枠に巻き取り、かせにする工程を「綛揚かせあげ」と言います。

綿糸のかせ作りには、「綾綛(九綛)」と「棒綛(紽綛ひびろかせ)」の2種類があります。

「綾綛(九綛)」は、糸を綾振に交互に巻いて、一綛ひとかせずつ、紽糸ひびろいとを使ってその上をゆるく結んだもので、主に細〜中糸に用います。

「棒綛(紽綛ひびろかせ)」は、一紽ずつ七紽をを一束に枠取り、紽糸ひびろいとを用いて各綛を編んだもので、太糸や輸入糸に用いられます。

一綛ひとかせは、一般的には綿糸で768メートル、毛糸で512メートル分束ねられますが、染色やその他の作業を考慮にいれて、一綛ひとかせの大きさが変更されることもあります。

糸を綛にする機械

紡績工程を終えて、紡錘ぼうすいに巻き取った糸をかせにするための機械を綛車かせくるま(桛車)などと言います。

鎌倉時代の絵巻物で延慶えんきょう2年(1309年)に、時の左大臣であった西園寺公衡さいおんじきんひらの発案によって描かれた『春日権現験記かすがごんげんけんき』に桛掛の用具がみえます。

綛揚かせあげされた糸は、先染めや漂白、のり付けなどの加工を経て、再び巻き返しますが、この時も綛車かせくるま(桛車)を使用します。

巻き返しの工程後は、経糸用は整経工程に入り、緯糸用は管巻工程にいきます。

綛染(かせぞめ)

かせの状態の糸を染色する「綛染かせぞめ」は、古くから日本で行われてきた方法です。

いわゆる草木染めの場合は、竹のさお竿綛糸かせいとを通して染色します。

近代には綛の状態で加工を行えるように機械化され、糸の精錬せいれんや洗い、糊付け、染色などが行えるように効率化されました。


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