迦陵頻伽とは、梵語(サンスクリット語)のカラビンガ(kalavinka)の音訳で、仏教における想像上の霊鳥を表します。
デザインにおける迦陵頻伽文(かりょうびんがもん)
大乗仏教の聖典の一つである『阿弥陀経』では、極楽浄土の鳥とされ、「若空無我常楽我浄(にゃく・くう・むが、じょう・らく・が・じょう)」を説くといいます。
諸仏の浄土を描いた「浄土曼荼羅」では、上半身が美しい菩薩の姿で、両翼を広げ、下半身には鳳凰がかたどられています。
日本では、正倉院宝物の「螺鈿紫檀五絃琵琶」の槽や「漆金箔絵盤」に見られます。
「螺鈿紫檀五絃琵琶」は、国家珍宝帳記載の楽器で、頭部が折れ曲がらない直頸形式で、螺鈿・玳瑁で宝相華文が特徴的です。
宝相華文の蔓の間地には、「迦陵頻伽」が描かれています。
「漆金箔絵盤」は、蓮の花をかたどった香炉の台で、花びらには金箔や多彩な顔料を用いて鴛鴦や獅子など、種々の模様(文様)が描かれています。
平安時代の延喜19年(919年)に作られた、仁和寺所蔵の国宝「宝相華迦陵頻伽蒔絵冊子箱」には、金銀蒔絵の宝相華文の各所に迦陵頻伽が舞っています。
京都の東寺に伝来した牛皮製の華鬘である「牛皮華鬘」には、宝相華唐草を背景に彫り出した極彩色の迦陵頻伽がデザインされています。
岩手県の中尊寺金色堂が所蔵する国宝である「金銅迦陵頻伽文華鬘」にも、透かし彫り(金属をくり抜く技法)で迦陵頻伽が表現されています。