位(くらい)や階級によって定められた位色(いしき)


日本においては、飛鳥時代(592年〜710年)から奈良時代(710年〜794年)にかけて、個人の地位や身分、序列などを表す位階を、冠や衣服の色によって差異を付ける制度である「衣服令えぶくりょう」が制定されました。

着用する衣服に関して定められた制度や法令のことを「服制ふくせい」や「衣服令いふくれい(えぶくりょう)」などと言い、身分や地位、職業などによって衣服の素材や色、形、着用する場所などを規定し、社会的秩序を守るために規定されました。

くらいや階級によって定められた色を、位色いしきといいます。

日本における位色いしきの始まりは、日本で603年に制定され、605年から648年まで行われた冠位制度である冠位十二階かんいじゅうにかいと考えられますが、はっきりとはしていません。

位を色で分けた冠位十二階(かんいじゅうにかい)

冠位十二階は、12段階の階級にそれぞれ色をつけて、朝廷内の序列を決めた階級制度で、高句麗こうくり百済くだらなどの制度を参考にして作られたものです。

『日本書紀』の推古11年の条に、以下のような冠位十二階についての記述があります。

「始めて冠位こうぶりのくらいを行う。大徳・小徳・大仁・小仁・大礼・小礼・大信・小信・大義・小義・大智・小智あわせて十二階としなあまりふたしな。並びに当れる色のあしぎぬを以って縫えり。いただきは撮て統べて袋の如くにして、もとほりを着く。ただし元日には髻華うずさす」

上の階級から、「大徳・小徳・大仁・小仁・大礼・小礼・大信・小信・大義・小義・大智・小智」にわかれています。

冠位十二階の冠位と色分けは、五行思想ごぎょうしそう五行説ごぎょうせつ)に影響を受けています。

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冠位の高い順に色を並べると紫→青→赤→黄→白→黒となり、具体的に冠位に対応した色合いは、位が高い順に以下のようであったと考えられます。

  1. 大徳→濃紫
  2. 小徳→薄紫
  3. 大仁→濃青
  4. 小仁→薄青
  5. 大礼→濃赤
  6. 小礼→薄赤
  7. 大信→濃黄
  8. 小信→薄黄
  9. 大義→濃白
  10. 小義→薄白
  11. 大智→濃黒
  12. 小智→薄黒

冠位十二階の制度によって、外交のために使者がきたときに、日本が天皇のもと、役人の制度が整った国であることを示すことにつながったようです。

大化の七色十三階冠(ななしきじゅうさんかいかん)

647年に制定された大化の七色十三階冠ななしきじゅうさんかいかんでは、織冠・繍冠は深紫、紫冠は浅紫、錦冠は真緋、青冠は紺、黒冠は緑というように、位によって服色が定められました。

天武14年(685年)には、爵位のごう(等級)を改めるとともに服色も改定され、690年、701年と冠位制度が整備されていきました。

奈良時代の位色いしきは「衣服令」によると、以下のようになります。

親王・諸王・諸臣の一位→深紫
諸王二位以下と諸臣三位以上→浅紫
四位→深緋
五位→浅緋色
六位→深緑
七位→浅緑
八位→深縹
九位→浅縹

平安時代に入ると少し変化があり、11世紀ごろには、四位以上は黒、五位は蘇芳すおう、六位ははなだと定まりました。


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