洋服の着こなし方によって、背を高くみせたり、体型が細くみえるようにするテクニックがあります。
キーワードは、「錯覚」で、視覚による錯覚をうまく利用することが重要です。
目次
背を高く体を細く見せる服装・ファッションのコツ
隈部恵子(著)『ファッションデザインの技法』には、具体例を踏まえながら、背を高くみせたり、体型が細くみえるようにするテクニックがわかりやすく記載されています。
スカートの長短による錯覚
同じ構造とシルエットをもつ洋服でも、スカート丈が長いロングスカートの方が細くみえて、シュッとした印象を受けます。
ベルトの有無による錯覚
一般的な服装の場合、ベルトをつけた方がウエストは細く見えますが、背が低くみえてしまいます。
理由としては、ベルトで区切られることによって、ベルトがない場合と比べると体の幅が広く、丈が短く感じられるからです。
ベルトの素材は共布を使用することで、区切りをはっきり示さなければ、低くみえることをカバーできます。
一方で、ベルトがない場合は、視覚的な区切りがないため、高さを感じられます。
幅が広く、しっかりとベルトを締めることで、ウエストラインをより細くみせることもできます。
ウエストの高さによって受ける錯覚
ウエストラインの位置で、全体の高さをはかるという視覚的な働きがあります。そのため、足が長く、ハイウエストのズボンを履いている人からは、身長が高い印象を受けます。
上記の画像を見ると、ハイウエストのドレスの方が、ローウエストのドレスよりも背が高く見えます。
視覚は、ウエストラインで区切られた部分の長い方を無意識に読み取り、ローウエストのドレスの方が、幅が狭く短く感じるため、足も短い印象も受けます。
ダーツが入ることによる錯覚
ウエストラインを中心に、上下にダーツが入ったドレスが3つあります。
ダーツとは、平面の布をつまんで縫うことで、人の体にフィットしやすいようすることを言い、美しい立体感を出すために用いられる手法です。
肩幅から真ん中のウエストまで伸ばされたダーツの線を持つものは、肩の広がりに対して、ウエストが細くみえる効果があります。
ウエストから裾までダーツの線をもつものは、全体が細長くみせる効果があります。
縦線が入ることによる錯覚
洋服の首回りのネックラインライン(襟ぐり)から、裾まで引かれた長くて強い線は、もっとも効果的に背を高くみせられます。
上記の画像では、ボタンがネックラインから裾までついている真ん中のドレスは、背を高くみせるためには効果的ですが、ベルトがなくウエストラインの区切れがない分、ウエストを細くみせる点においては左のものよりは効果が薄くなります。
スカート部分が裾に向かって大きくふくらんだ、結婚式でよく見られるようなプリンセスラインのドレスは、背を高くみせると同時に、ウエストも細くみせるもっとも効果的な錯覚の応用といえます。
縦の線を強調するためには、襟は装飾のないプレーンなものがよく、ベルトも共布を使用することが望ましいとされています。
同じような形でも、柄が入っている生地では縦線の印象が薄くなります。
体型を細く見せるファッションのコツ
アワーグラスシルエットによる錯覚
アワーグラスシルエットのドレス胸とスカートの腰部分を膨らませ、砂時計(アワーグラス)のようにウエストを細く絞って女性的な曲線を強調したものを、アワーグラスシルエットのドレスと言います。
アワーグラスシルエットは、肩と裾の巾の対比によって必然的にウエストが細くみえます。
ウエストに切り替えがなく、ウエスト部分を強調しないほぼストレートのシルエットを持つドレスは、必然的に背が高くみえますが、場合によってはウエストが太くみえることがあります。
ヨーロッパにおいて近代から現代にかけて使用されたコルセットは、胸元からウェストにかけてのラインを補正する役割を持ち、ヒップラインの強調とは対比的に、ウエストの部分を細く見せました。
当時のヨーロッパ人にとっては、その体型がもっとも女性が美しくみえるシルエットであると考えられていたのでしょう。
大きな衿による錯覚
衿元から離れた大きな衿あることで、肩幅を広くみせられ、ウエストの幅との対比によって体が細くみえます。
錯覚の活用が、ファッションデザインのカギに
錯覚をどのように活用するかがファッションデザインのカギになっているのは、上記の説明をいくつか読んだだけでもよくわかるのではないでしょうか。
ボタンやステッチ、ポケットなどの付属品をどのようにつけるか?逆に付属品を取り除くことで、いかにシルエットの線を邪魔する要素を取り除くか?
視覚的にどのようにみえるのかを論理的に理解しておくことは、ファッションデザイナーにとっては必要なことでしょう。
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今回取り上げたテーマをより深く学びたい方には、『ファッションデザインの技法』は非常におすすめできる本です。
【参考文献】隈部恵子(著)(1987)『ファッションデザインの技法』源流社