花森安治の灯をともす言葉。暮らし、生き方、美しさ、創ること、書くことについて。


生活雑誌『暮しの手帖』の創刊者である花森安治(はなもりやすじ)。

彼は、「暮しの手帖」の取材、執筆からデザイン、表紙にいたるまで自ら手がけていました。1997年に心筋梗塞でこの世を去るまで、さまざまな才能を発揮しづづけた、稀有な編集者です。

2016年、NHKの朝の連続テレビ小説、『とと姉ちゃん』では、暮しの手帖社の創業者である大橋鎭子(おおはししずこ)との雑誌出版の物語がモチーフにとされていたというのが記憶に新しいです。

灯をともす言葉』という書籍には、より良い生活や暮らしについて考えつづけた彼が、残してきた言葉の数々が載っています。

個人的に好きな言葉がたくさんありましたので、そのなかの一部を紹介したいと思います。

暮らしについて

お金やヒマとは関係がない みがかれた感覚と まいにちの暮らしへの しっかりとした眼と そして絶えず努力する手だけが 一番うつくしいものを いつも作り上げる

 

暮らしと結びついた美しさが ほんとうの美しさだ

 

亡びゆくものは みな美しい その美しさを愛惜するあまり それを 暮らしのなかに つなぎとめておきたいとおもうのは人情であろう しかし そうした人情におぼれていては 「暮らしの美しさ」の方が 亡びてします

 

暮らしは 日々刻々 生きて流れている だから 言葉も 日々に生き 刻々に流れている

生き方について

色と限らず 美しいことについての感覚がまるでないひとたちが 日本の政治や経済を動かしているところに いまの世の中の不幸がある

 

ぼくら このごろ すこしばかり やさしい気持を なくしてしまったような気がする
ごくたまに きれいな青い冬の空が みえることがある それを しみじみと 美しいとおもって みることをしなくなった はだかの電線が ひゅうひゅうと鳴っている その音に もう かすかな春の気配を きこうとしなくなった 早春の 道ばたに 名もしらぬ雑草が ちいさな 青い芽を出している それを しんじつ いとおしいとおもって みることをしなくなった まいにち じぶんの使う道具を まるで 他人の目で みている みがいてもやらない ふきこんでもやらない つくろってもやらない こわれたら すぐ捨ててしまう 古くなったら さっさと捨ててしまう 見あきたら 新しいのに買いかえる 掃除機を買ってから なんだか 掃除が おろそかになった 冷蔵庫を買ってから どうやら 食べものを よく捨てるようになった 物を大切にする ということは やさしいこころがないと できないことだった

 

昨日そうしたから 今日もそうする ひとがそうしているから じぶんもそうする それはらくかもしれないが それでは 生きてゆく甲斐が ないのである

 

どうせ二度と生まれてこない しかも短い 宝もののような一生ではないか 命ある限り精いっぱい働き 精いっぱい楽しむのがいいのである なにを自分の手で 自分の一生を 狭く 暗くしてしまうことがあろう

 

大きな過ちのないということ ボクはこんな愚劣な話はないとおもいます 大した過ちがないということは つまり なにもしなかったということなのです 人間というものは 何かすれば 成功するチャンスもあれば 失敗するチャンスもなる どこかに歩いて行こうという場合に 大した過ちをしないということは 踏み出さないということではないかと思います 近頃は若い人まで 生きて行くのに 大過なく生きて行こうとしている 人生何十年いきれれるものかわかりませんけれども 過ちがなかったということだけを 誇りにして生きて行くことは 軽蔑したいのです

 

企業よ そんなにゼニをもうけて どうしようというのだ なんのために 生きているのだ

美しさについて

なにごともキカイばやり 量産の時代だが それだけに 何十年もにがきあげた「手作り」の美しさが これから ますます光ってくるにちがいない すくなくとも 日本のようにもの乏しい国では この「神技」を思う存分十二分にふるい ふりかざして生きてゆくより 道はあるまいとおもうのだが

 

あなたを、くだらなく飾り立てて せっかくの、その美しさを こわしてしまわないように

創ること、書くこと

どのように書くか というよりも なにを書くかだ 書かなくてはならないことが なになのか 書くほうにそれがわかっていなかったら 読む人にはつたわらない 小手先でことばをもてあそんでも 読むひとのこころには なにもとどかない

 

今まで世になかった ものを創り出す それがスタートで ケンカはそれから先だ

最後に

花森安治さんは、仲間の社員を振り回しながら、彼がワンマンで「暮らしの手帖」を作り上げていたことがわかります。その仕事に対する姿勢による、良い面と悪い面の間の振れ幅は大きかったことでしょう。

そのスタンスは、他の追随を許さない、革新的で突き抜けるようなものづくりをしていた、Appleの創業者であるスティーブ・ジョブズと相通じるものを感じます。

狂気を感じるほどのこだわりと、仕事への情熱。ものづくりに携わる人々にとっては、ここまでやりきっていた人がいたというのを知るだけでも、よい刺激になると思います。


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