藤の葉で染色,銅媒染で金茶色に染めた色合い

染色・草木染めにおける藤(ふじ)


ふじ(学名Wisteria floribunda)は、日本の固有種で、マメ科フジ属のつる性落葉木本もくほんです。

藤の花が咲く時期は4月中旬~5月頃で、葉の展開からやや遅れて開花し、枝の先端に多数の蝶形花ちょうけいかを付けた花序かじょが垂れ下がります

藤棚ふじだなの伸びすぎた枝葉を剪定せんていした時に、その枝葉を染色に利用することもできます。

染色・草木染めにおける藤(ふじ)

7世紀後半から8世紀後半(奈良時代末期)にかけてに成立したとされる日本に現存する最古の和歌集である『万葉集まんようしゅう』には、4,500首以上歌が集められていますが、藤の花を詠んだ歌が25首収められています。

藤の皮の繊維を裂いて織った衣類(藤衣ふじごろも)を詠んだものは2首あり、麻布や、葛布くずふ、しななどの繊維と同じように、古くから実用とされていたことがわかります。

藤棚ふじだなの伸びすぎた枝葉を剪定せんていした際に出た枝葉は、染色に利用できます。

藤で金茶色(きんちゃいろ)を染める方法

藤の葉を染色に使用し、銅媒染(酢酸銅さくさんどう)で、金茶色きんちゃいろに染めることができます。

藤の葉で染色,銅媒染で金茶色に染めた色合い

藤の葉で染色,銅媒染で金茶色に染めた色合い

染色の流れとしては、以下のようになります。

①藤の緑葉1kgを鍋に入れて8リットルの水を加えて熱し、沸騰してから20分間熱煎して、煎汁せんじゅうをとる。3回まで同じように、煎汁せんじゅうをとり、すべてを合わせて染液とする

②染液を火にかけて熱し、絹糸1kgを浸して15分間煮染したあと、染液が冷えるまでか、一晩染め液に浸しておく

酢酸銅さくさんどう30g(糸量に対して3パーセント)を15リットルの水に溶かした液に、染糸を浸して30分間媒染し、水洗いする

④染液を再び熱し、媒染した糸を浸して15分間煮染し、染液が冷えるまで浸しておき、水洗いして天日の元乾燥させる

⑤濃色に染める場合は、新しく藤の緑葉1kgを用いて同じように染めていく

藤で海松色(みるいろ)を染める方法

木酢酸鉄もくさくさんてつ鉄漿かね(おはぐろ)の鉄分を媒染に使用して染めると、黒みを帯びた海松色みるいろに染まります。

海松色みるいろとは、海藻かいそうので海中の岩に生える海松みるの色を表した茶みを帯びた深い黄緑色のことです。

藤の葉で染色,鉄媒染で染めた色合いの例

藤の葉で染色,鉄媒染で染めた色合いの例

染色の流れとしては、以下のようになります。

①藤の緑葉1kgを鍋に入れて8リットルの水を加えて熱し、沸騰してから20分間熱煎して、煎汁せんじゅうをとる。3回まで同じように、煎汁せんじゅうをとり、すべてを合わせて染液とする

②染液を火にかけて熱し、絹糸1kgを浸して15分間煮染したあと、染液が冷えるまでか、一晩染め液に浸しておく

木酢酸鉄もくさくさんてつ、または鉄漿かね(おはぐろ)15cc(糸量に対して1.5パーセント)を15リットルの水に溶かした液に、染糸を浸して30分間媒染し、水洗いする

④染液を再び熱し、媒染した糸を浸して15分間煮染し、染液が冷えるまで浸しておき、水洗いして天日の元乾燥させる

藤で黄色を染める方法

木灰もくばいに水や熱湯を混ぜて、その上澄み液である灰汁あく酢酸さくさんアルミを使用して媒染すると(アルミ媒染)、黄色に染まります。

灰汁あくは、椿つばきから抽出したものが、アルミ分が多く特に良いとされます。

関連記事:染色・草木染めにおける灰汁(あく)の効用と作り方。木灰から生まれる灰汁の成分は何か?

【参考文献】『月刊染織α1986年2月No.59』


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