ファッション・服飾におけるシック(chic)


シック(仏:chic)という言葉は、①しゃれた、粋な、あか抜けた②上品、優雅③現代風④流行などの意味があります。

「エレガント(仏:elegant)」の同義語として用いられることがありましたが、厳密に言えばシック(chic)とエレガント(elegant)は歴史的には異なります。

ファッション・服飾におけるシック(chic)

かつてエレガント(elegant)は「貴族社会的、上流階級的」という含意(表面的には見えないような別の意味合い)があったのに対して、シック(chic)は「市民社会的、庶民的」な雰囲気の中で用いられたという身分や地位などの階級的な意味合いの違いがありました。

例えばエレガント(elegant)は、夜の観劇や舞踏会、晩餐会ばんさんかいなどで着用された豪華なイブニングドレスについての優雅さを表現する際に用いられました。

それに対してシックは、簡素化されたアフタヌーンドレスやダウンウェアなどの上品さを表現する際に用いられたのです。

シック(chic)の由来

フランス語の「chic」は、古ゲルマン語(現ドイツ語)の「schiken=適切に整える、手際の良い」に由来しています。

したがって、フランス語のchicの古義は「小器用さや小手先の技巧」などの意味でした。

異説としては、フランス語の「chicane=ごまかし」からchicが由来しているとも言われます。

エレガント(elegant)の原義は、「選ぶ」で、贅沢にあれこれ選んで美を表現したのに対して、シック(chic)は市民階級が有り合わせのものを「巧みな工夫」、あるいは「ごまかし」によって美を作り出したものを表したのです。

シック(chic)という言葉はその後、市民階級の人々が勢力を得てくるとともに意味の上昇を見せ、「上品な、洗練されている」ことを前提としての「おしゃれ、流行、粋」などの意味になり、19世紀初頭から盛んに用いられました。

これに対してエレガント(elegant)は、貴族階級が市民階級に対して相対的に衰えていったことによって、単なる「おしゃれ」の意味を持つようになりました。

このため、現在ではシック(chic)とエレガント(elegant)はほとんど同義語として用いられることが多いです。

英語の「chic」は、フランス語の「chic」がそのまま用いられました。

日本語におけるシック(chic)

日本でもシック(chic)という言葉はよく用いられ、「粋な」「上品な」「おしゃれな」「あか抜けた」「落ち着いた様子」などを表します。

ファッションやインテリア、空間などを表現する際に用いられます。

日本語における「粋(いき)」は、「意気いき」または「いき」という言葉に通じ、俗っぽくなく、すっきりとあか抜けているようなお洒落さや、なまめかしさを感じるような色気あるものに対して用いられます。

格式や威厳を重んじる武家社会から生まれた言葉ではなく、江戸時代後期、気さくで嫌みのない江戸下町の町人気質から生まれ、都会的に洗練された美しさを示すものなのです。

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