檳榔(学名:Areca catechu)は、東南アジアや東アフリカの一部で見られるヤシ科の植物で、種子は檳榔子といいます。
ヤシ科の植物ですが、ココヤシと違って幹は真っ直ぐに伸びるのが特徴で、樹高は10m~20mに達します。
雄花と雌花が同一個体に生ずる雌雄同株であり、1つの花序に、雌花(めばな)と雄花(おばな)の花をそれぞれつけます。
染色・草木染めにおける檳榔子(びんろうじ)
古くから、檳榔子を使って、黒染めがおこなわれてきました。
特に、黒地に紋所を白く染め抜いた高級な黒紋付の染めに使用されました。
藍染や紅花で下染された上から、檳榔子の煎汁を何回も塗り、鉄媒染することで黒く染めていくのです。
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日本においては、ビンロウの果実を薬用や染料にするため、天平勝宝時代(756年)に海外から輸入した記録が残っています。
檳榔子(びんろうじ)の成分
果実(檳榔子)は卵形で熟すと榿色となり、内部に1個の灰赤褐色から灰黄褐色の種子があり、これを乾燥したものが生薬となります。
薬用としては、駆虫や消化不良や腹痛、便秘などの胃腸機能改善を目的として用いられます。
檳榔子には、アルカロイドの一種であるアレコリン(arecoline)、アレカイジン、グバコリン、グバシンなどを含みます。
アルカロイドは、植物が動物に食べられないように自らを守るために産生するもので、毒性を持ち、薬用として用いられることも多くあります。
ステロイド系のジオスゲニンやクリプトゲニン、β-シトステロール、その他、タンニンも含まれています。
嗜好品としての檳榔子(びんろうじ)
檳榔子が含むアレコリン(arecoline)は、タバコなどと同様、ニコチン酸関連のアルカロイドで、副交感神経興奮作用や中枢神経抑制作用があります。
タバコのニコチンと同様の作用(興奮、刺激、食欲の抑制など)を引き起こすとされ、石灰を用いることで、アルカロイドをよく抽出することができ、噛みタバコに似た使われ方をされます。
その使用方法は未熟な果実から種子を取り出し、2~4分割してから石灰をからめて、コショウ科のキンマの葉に包んでゆっくりとガムのように噛みます。
しばらくすると檳榔子と石灰、キンマの葉の成分が反応し、唾液や口の中が真っ赤に染まっていきます。
前述した、副交感神経興奮作用や中枢神経抑制作用があるため、幸福感に溢れ、とてもさわやかな気分になるようです。
ただ、有害物質も含まれており、世界保健機関(WHO)により発がん性物質に認定されています。
また、真っ赤に染まった唾液を道路などに吐き捨てるため、衛生的な面と景観がよくない点が指摘されています。