タイの現在の正式国名は、タイ王国(ラーチャ・アナチャク・タイ The Kingdom of Thailand)ですが、20世紀初頭までの国名は「シャム」でした。
「シャム」(syama)は、サンスクリット語由来とされますが、他国からのいわば他称に基づくものであったため、1938年に近代国家へと進んでいくなかでタイ族の国民国家として「タイ」に改称されたのです。
日本では「暹羅」と書かれシャムと呼び、14世紀頃から600年~700年ほど続いた国の呼び名でした。
シャム更紗とは?
シャム更紗は、その名の通りシャムの国から来た更紗で、室町時代末期ごろに南蛮船で舶載された布を表します。
文様の特徴としては、火焰文様、宝珠文様、菩薩文様(仏手)などがあり、手描きや型染めで染められました。
インド更紗やインドネシアのジャワ更紗などとは、その文様表現に違いがあるのです。
シャム更紗は、シャムロ染(暹羅染)とも言われ、日本でこの更紗を模作したものを華布と呼ばれ、中国から渡来したものは、唐華布と呼んで区別されていました。
正徳3年(1712年)刊の百科事典である『和漢三才図会』では、「華布」と書いて「さらさ」と読ませています。
シャム更紗は、天保(1831年〜1845年)の頃に大量に輸入され、その価格も比較的安く、多くの人々に用いられたとされます。