羽二重は、新潟や富山、石川、福井や福島などで生産され、地理的な共通点としては北陸地方という点があります。
羽二重という織物は、製織工程において密に並べた経糸に、湿り気を与えた緯糸を打ち込む必要があるため、空気中の湿度を必要とし、夏は多湿で冬も雪が降る期間が長く、湿度の高い北陸地方が生産に適していました。
羽二重といえば、重めのものは染帯地や黒紋付地などで、軽めのものは胴裏やスカーフ用などに使用されます。
裏地用の羽二重の生産が多く、福井や福島、石川などで織られ、和服の表地用の羽二重は、新潟県の五泉市産のものが質、量ともに優れていました。
新潟県の五泉地域は、古くから織物が盛んで、江戸時代の天明年間(1781年〜1788年)の頃から五泉平と呼ばれる袴地が織られていました。
明治27年頃(1894年〜)には、福島県の川俣から羽二重の技術を導入し、五泉平の技法を生かして羽二重の生産に成功し、「塩瀬羽二重」が有名です。
目次
羽二重(はぶたえ)の由来
羽二重という名前の語源としては、①普通の絹を二重に合わせたような絹②筬の一羽に縦糸を二重に通すという意味③古代用語の「羽振妙」や「白羽布」からきた言葉などと、由来に諸説ありますが、定かではありません。
羽二重の名称が出てくるのは、安土桃山時代の頃からで、天正年間(1573年〜1591年)に泉州(大阪府)の堺へ、中国人の織工によって縮緬や綸子などの技法とともに伝えられたとされています。
当時は、美しい羽二重の織物を「光絹」と呼んだようです。
羽二重(はぶたえ)の技法
羽二重は、経糸、緯糸ともに無撚りの生糸を使用します。
太さは、21〜27デニールほどの細い糸を用い、経糸は2本を壺糊のなかで引きそろえて糊付けします。
緯糸は、経糸と同じ太さの糸を数本〜数十本引きそろえますが、経糸のようには糊付けせずに水分を含ませて使用します。
この緯糸のことを、「湿緯」や「しめしぬき」などと呼びます。
羽二重は、経糸を密にして強く張り、緯糸を強く打ち込むために、湿り気を与えて生糸を柔らかくして打ち込みやすくするのです。
織り上げた生地は、縮緬などの後練り織物と同様に、精錬と漂白をして仕上げることで、羽二重が持つ独特な光沢と柔軟な風合いの織物になるのです。
羽二重(はぶたえ)の種類
羽二重、糸の使い方や織り方によって、種類や呼び方があります。
平羽二重(ひらはぶたえ)
平織りで織られる羽二重の総称で、いわゆる一般的な羽二重のことです。
片羽二重(たかはぶたえ)
片羽二重は、生糸1本を経糸として織った薄地の羽二重です。
諸羽二重(もろはぶたえ)
経糸に生糸を2本引き揃えたものを用いた羽二重です。
塩瀬羽二重(しおぜはぶたえ)
単に塩瀬ともいわれ、緯糸に太めの糸を用いるため、横畝ができ、主に帯地などに使用されます。
御召羽二重(おめしはぶたえ)
御召に似た地風(布地がもっている風合い)になる重めの羽二重で、男性の紋服(紋付袴)に用いられます。
朱子羽二重(しゅすはぶたえ)
朱子組織に織る羽二重で、生絹朱子のことをいいます。
紋羽二重(もんはぶたえ)
羽二重の糸使いのなかに、ジャガード織りを使って地紋を織りだした羽二重の総称です。
綾羽二重(あやはぶたえ)
綾織(斜文織)された羽二重で、経糸、緯糸ともに無撚(撚っていない)の生糸を使用し、一般的には2上がり、2下がりの両面綾です。