薇織(ぜんまいおり)

薇織(ぜんまいおり)とは?薇織(ぜんまいおり)の特徴と技法について


山野に自生するぜんまい(ゼンマイ)(学名:Osmunda japonica)は、山菜料理の「ふるさとの味」として人々に親しまれていますが、ぜんまい(ゼンマイ)の綿わたを使用した織物が織られていました。

薇織ぜんまいおりとは、ぜんまい(ゼンマイ)は春先に、頭部から綿わたが生じますが、その綿わたから糸をつむいで織りあげた織物です。

古くは、東北地方の山間部で、自家用の衣類として織られていました。

薇(ぜんまい)の綿,Osmunda japonica 001

薇(ぜんまい)の綿,Osmunda japonica,Kropsoq, CC BY-SA 3.0 <http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/>, via Wikimedia Commons,Link

薇織(ぜんまいおり)の歴史

東北地方の寒冷地のため綿花の栽培がほとんどできず、農漁民の日常衣類は苧麻からむしや麻から織り上げた麻布でした。

もちろん、木綿の布や糸は北国にも流通していたものの、貧しい庶民にとっては高価でなかなか手を出せるものではなかったのです。

そこで、ぜんまいの綿わたに注目して布を作るというのは自然の流れだったのでしょう。

Osmunda japonica (16729439544)

薇(ぜんまい),Osmunda japonica,harum.koh from Kobe city, Japan, CC BY-SA 2.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.0>, via Wikimedia Commons,Link

薇織ぜんまいおりの歴史は、300年ぐらいとされていますが、ぜんまいの綿わたは毛足が短く、織りにくいことから、綿花(木綿)や真綿まわた(絹)の繊維を混ぜて糸を紡いでいました。

山形県温海あつみ町関川と、新潟県山北町山熊田で作られた薇織ぜんまいおりは、縦糸に絹糸を用い、緯糸にぜんまい綿と真綿の混紡糸が使用されていました。

秋田県岩城町亀田で作られたものは、歴史が古く、古来からの手法が伝承され、経糸に綿糸を用い、緯糸にぜんまい綿と綿花の混紡糸が使ったもので織られていました。

この地方で、昭和の初期ごろまでは盛んに織られていたものに「薇白鳥織ぜんまいはくちょうおり」がありました。

薇白鳥織ぜんまいはくちょうおりは、明治時代の中頃に、もともと御用商人ごようしょうにんであった佐藤雄次郎によって考案されたもので、経糸に綿糸、緯糸にぜんまいの綿と、綿花、白鳥の羽毛うもうの3種の混紡糸こんぼうしを使って織られていました。

薇織(ぜんまいおり)の特徴

薇織ぜんまいおりの特徴としては、丈夫で防水性に優れ、虫に食われにくい(防虫性)とされていました。

ウールのような質感もあるため、きものやコートにも用いられていました。

薇織(ぜんまいおり)の技法

晩春の5月ごろに、山に入ってぜんまいの若芽を摘み、ぜんまいの綿を採取します。

3日から4日ほど日陰干しをしながら、綿に付着しているゴミを取り除きます。

Osmunda japonica (17115161879)

薇(ぜんまい)の綿,Osmunda japonica,harum.koh from Kobe city, Japan, CC BY-SA 2.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.0>, via Wikimedia Commons,Link

このぜんまいの綿に、綿花や真綿まわたの繊維を混ぜたものを手で紡いで緯糸に用いるのです。

山形県の温海あつみ町関川の薇織ぜんまいおりは、ぜんまいの綿を4割、真綿6割の割合の混紡糸こんぼうしを緯糸に、経糸を絹糸にして手織りされていました。

秋田県岩城町亀田産のものは、ぜんまいの綿を3割、綿花7割の割合の混紡糸こんぼうしを緯糸に、経糸を綿糸にして織られていました。

【参考文献】荒木健也(著)『日本の染織品 歴史から技法まで』


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