綿花はアオイ科のワタ属に属し、品種は20種類ほどが野生種として残っています。
目次
繊維をつくる綿花
繊維をつくらない種類もありますが、繊維をつくるワタ属は、大きく以下の4つに分類することができます。
- arboreum(アルボレウム)
- herbaceum(ヘルバケウム)
- barbadense(バルバデンセ)
- hirsutum(ヒルスツム)
①arboreum(アルボレウム)と②herbaceum(ヘルバケウム)は、インド、パキスタンのあたりや中東方面が原産地とみられています。
①arboreum(アルボレウム)は、インドから世界中に世界中に広がり、古く日本で栽培されていた綿花はアルボレウムであったと推定されます。
③barbadense(バルバデンセ)と④hirsutum(ヒルスツム)は、中米や南米北部などのアメリカ大陸が発祥と言われます。
①arboreum(アルボレウム)②herbaceum(ヘルバケウム)の染色体が13個、③barbadense(バルバデンセ)④hirsutum(ヒルスツム)は26個であるため、染色体の数が違う品種同士の交配はできません。
非紡績用のアルボレウム
日本や中国、朝鮮で古くより栽培されてきた綿花は、arboreum(アルボレウム)と考えれれています。
ただ、arboreum(アルボレウム)の中で現在商業生産されているのは、インド北部、パキスタン、ビルマのデシ綿などに限られています。
デシ綿の品質としては、以下のような特徴があります。
- 繊維が短い
- 繊維の長さは20.6mm以下
- 繊維が太い
- 手触りが粗荒
- 機械紡績には向いていないが、ふとん綿や脱脂綿に適している
ちなみに、デシ綿はアジアの在来種と呼ばれています。
日本で栽培されていたのはデシ綿で、今でも和綿と呼ばれ、手つむぎ用、ふとん綿などに使われているのです。
糸を紡いで織物を作る場合は、中繊維綿以上の綿が使われます。
幻のヘルバケウム
ヘルバケウムはほとんど商業栽培されておらず、一時は地中海沿岸からアフリカ北部に分布していたようです。
繊維は、アボレウムに似ているようです。
超長繊維綿のバルバデンセ
barbadense(バルバデンセ)は、ペルー北部が発祥地と考えられるペルーの在来綿で、一時はカリブ海の島々からアメリカ南東部まで広がった海島綿、さらにエジプトに渡り、エジプト綿、スーダン綿として定着しました。
barbadense(バルバデンセ)は、綿花品種のなかで繊維が最も長く、大部分が超長繊維綿あるいは超繊維綿に属し、高級綿製品の原料として使われています。
市場では、エジプト綿が最も多く取り扱われており、歴史的にも名が知られていたため、一般的にbarbadense(バルバデンセ)の品種をエジプト綿種と呼んでいます。
綿花の約9割がヒルスツム
メキシコ南部やアメリカ地域に自生していたhirsutum(ヒルスツム)の仲間から、アメリカで品種改良を重ねてつくりだしたもので、アプランド綿といわれます。
アプランド綿は、成長期間が短く、どのような気候条件にも適合する上、繊維の紡績生に優れ、用途が広いため、19世紀に世界各国に広がり、栽培されている世界中の綿花の90%を占めているそう。
品種の多様性はどれほどか
繊維をつくるわた属は上記の4品種ですが、それぞれの品種においても多様性があります。
アメリカでアプランド綿を開発するのに、1千種類もの品種が集められ、それを交配したと言われ、遺伝子のレベルでみるとかなりの多様性が存在します。アメリカで栽培されているものでも、アプランド綿は35種類ほどになります。
世界中で栽培されているものは、ほとんどが栽培種で、人の手で交配されて作り出されたものです。
綿の栽培国では、綿花の品質退化を防いだり、より優れた品種の綿花を生産するため、品種改良の研究が行われているので、一国のなかでも品種は多様で、品質にも相違があります。
世界中でその土地にあった品種改良がされ、それぞれの地域の気候、風土の違いによって品種にも微妙な相違がでてくるため、世界各国で生産される綿花は、それぞれ異なった特性を持つと言っていいでしょう。
【参照文献】日比暉(著)『なぜ木綿?綿製品の商品知識】