赤色を得られる染料の色素は少なく、紅花や蘇芳以外には、アントアキノン系の色素である茜やコチニール、ラックなどが挙げられます。
紅花や蘇芳は、染織の歴史を語る上では重要な色ですが、いずれも堅牢度に不安があり、長期間に渡って染色時の色合いを残すのは難しいです。
天然染料で美しい赤が得られるコチニールはアントラキノン系の色素で、堅牢度が高いので現代でも染色においては重宝される染料です。
染色・草木染めにおけるコチニール
コチニールとは、中南米のノパレア・コケニリフェラ(nopalea cochenillifera)の一種であるコチニールサボテン(Opuntia cochenillifera)やそれに寄生する半翅目コチニールカイガラムシ(学名:Dactylopius coccus Costa)の昆虫(臙脂虫)を表します。
また、コチニールカイガラムシ(臙脂虫)から取った赤い色素や染料などを意味します。
プレインカの数々の染織品に見られる美しい赤色は、コチニールによって染められていました。
日本には原虫よりも毛織物の製品が多く輸入され、赤染めされた獣毛の意味である「猩々緋」と呼ばれて珍重されていました。
堅牢度が高いアントラキノン系の赤色色素
コチニールやラックなどのアントラキノン系の色素は堅牢度が高いとされますが、それは基本構造が亀の甲が三つ並んだ「アントラセン」という形であることによって生まれます。
合成染料の開発においてもこの構造を目指して作られていたほどの強い構造であり、天然および合成染料の中でも最も堅牢度が高いとも言えます。
原虫は色素の含有量がおよそ50%ほどと高く、溶解が早いため抽出が簡単です。
乾燥した原虫を前もってすり鉢などで砕いた方が、抽出時間が短縮され、濾過するのが面倒でも効率は良くなります。
媒染は、酢酸クロムやミョウバンでも十分堅牢な染め上がりとなります。
染液に酸を加えて強酸性にし、PH3くらいまで酸性を強くすると、赤色の濃度が上がっていき鮮やかな赤色に変化していきます。
ただ、ソーピングやアンモニア処理を怠ると、色落ちはするので注意が必要です。
【参考文献】『月刊染織α1992年7月No.136』