デニム(denim)は、もともとアメリカで労働着(ワークウェア)として誕生しました。
1840年代にカリフォルニアで金の鉱脈が発見されたことにより、いわゆるゴールドラッシュと呼ばれる金の採掘ブームが1870年代にかけてまきおこりました。
金鉱労働者の間で堅牢な衣類の需要が増えたことが、デニム誕生の背景としてあるのです。
1853年、ドイツからサンフランシスコに移民としてやってきたLeviStraussは、耐久性に優れたキャンバス素材を使ったパンツを自身の雑貨店で販売しました。
これが、世界中で愛されているデニムブランド「リーバイス(Levi’s)」のはじまりと言われています。
目次
デニム(denim)、ジーンズ(jeans)の防虫・虫除け効果
労働着としては、素材の堅牢さは大前提としてありますが、染色も非常に重要な要素としてあげられます。
もともと誕生した労働着は、デニム地(青)とブラウンダック地(生成り色)の二種類だったようです。
のちに汚れが目立たなく、繊維自体の強さが補強される点など、実用性に富んだインディゴ染めをしたデニム地に統一されていきます。
元々はアメリカでも天然の藍染めがおこわれていましたが、現地の労働者を悩ませたガラガラヘビが嫌うピレスロイドと呼ばれる成分が天然のインディゴには含まれていたために、防虫・ヘビ除け効果が期待されていたと言われています。
現在は、世の中に流通しているデニムのほとんどは、石油由来のインディゴ染料によって染められているので、基本的にピレストロイドは含まれていません。
デニム(denim)とジーンズ(jeans)の違い
デニムとは生地の名前であり、綾織りで織られた厚手の綿織物を指します。
綾織りにも左右の向きがあり、織物の表に見える畝が右肩上がりになっているのが右綾で、生地が伸びにくい特徴があります。
畝が左肩上がりになっている左綾は、右綾に比べると糸の織り込みがいくらか甘くなり、生地の風合いが柔らかく、体に馴染みやすいのが特徴としてあります。
色落ちに関しては、右綾の方が、色落ちが激しいようです。
有名デニムブランドの生地においては、リーバイスは右綾、ラングラーやリーは左綾となっています。
ジーンズ(jeans)は、デニム生地を主に使用して作られたパンツのことを指しますが、デニムという言葉も、生地そのものから解釈が広がり、デニム生地で作られた衣類を表すようにもなりました。
デニム生地は、経糸に色糸(インディゴ染めをされた太番手の糸)を使用し、緯糸には経糸より少し細くて白い(晒された)糸を使用します。
デニム生地に近いものとしてタンガリー生地がありますが、ダンガリーはデニムとは違い、経糸に白系の糸を使用し緯糸に色糸を使用します。
タンガリー生地は、デニム生地と比較すると、織り上がった全体の色の印象は薄く感じます。
デニムと同じように経糸を色糸、緯糸には白系の糸(晒糸)を使用するシャンブレーと呼ばれる生地がありますが、織り方が綾織りではなく平織りにすることで、デニムに比べると白糸の割合が多いものとなります。
リーバイス(Levi’s)デニムの特徴
デニムは、労働着を出発点としたため、繊維の素材自体の堅牢さはもちろん非常に大事な点ですが、リーバイスのデニムにおいては、強度を補う細部に工夫を凝らしたりと、特徴的な点があります。
リベット(rivet)
仕立て屋をしていたヤコブ・デイビスは、パンツのポケットのほつれやすさを解決するために、リベット(rivet)を打ち込むことで補強することを考え出します。
リベットとは、部品と部品同士をくっつけるためのもので、古くから使われています。
リベット付きのパンツは、労働者の間で人気を得て、ヤコブの取引先であったリーバイス社と共同で特許権を1873年に取得しました。
リーバイスを象徴するような細部の機能的かつ美的なデザインであるリベットは、1920年ごろまではすべて手打ちで行われていたそうです。
ステッチ(stitch)
ステッチ(stitch)は、「縫い目」のことで、リーバイスのデニムでは、「アーキュエイトステッチ」と呼ばれるカモメのようなお尻ポケットにあるステッチ模様が有名です。
カモメのような形になっているのは諸説あるようですが、お尻のポケットの裏に当て布をするためのステッチとして導入され、当て布をしなくなった後もデザインとして使用されたという説が有力とされているようです。
革パッチにデザインされた2頭の馬
デニムの腰部分についている革パッチには、2頭の馬がデニムを挟んで互いに引っ張りあっているデザインが施されています。
2頭の馬が引っ張りあっても破れないほどの強度があるということを意味しているもので、リーバイスの象徴的なマークとなっています。
その他、ボタンの形状やデザイン、後ろポケットに縫い付けられたリーバイスを象徴するブランドタグなど、人々を魅了し続けるディテールにこだわったものづくりが行われてきました。
【参考文献】藤原裕(著)『教養としてのデニム』