ファッション・服飾における黄金比、黄金分割。洋服が綺麗にみえるバランスを論理的に理解する


ファッションにおいて、外見が綺麗に見せることができるバランスがあります。

黄金比おうごんひという言葉を聞いたことがある方もいると思いますが、黄金比おうごんひを用いて長さを分けることで、見栄えの良いバランスがとれるのです。

黄金比おうごんひを用いて長さを分けるので、黄金分割おうごんぶんかつ(GoldenMean)または黄金比分割おうごんぶんかつといいます。

一般的には、7:3に分けられたものが美しく見えるといわれます。

確かに7:3は黄金比に近い値ですが、より正確に「黄金比」に近いものは、5:8に分割された程度になります。

黄金比とは

黄金分割の前に、重要な黄金比という考え方について説明します。

黄金比(golden ratio)は、下記の「φ(ファイ)」という記号で表される「黄金数おうごんすう(golden number)」を用いて表現される比率のことを言います。

Golden ratio segments

黄金比/Tomruen/CC BY-SA 4.0/via Wikimedia Commons,Link

黄金数は分数で表せず、小数点以下の続き方に規則性がない「無理数むりすう」です。

黄金数は(φ )= 1. 6180339887〜…..と続いて行くため、実際に黄金数を使用する場合には、そのおおよその数である1.618という数字が使用されることが一般的です。

黄金長方形(Golden Rectangle)

人間がある対象を見て、最も美しいと感じる比率は、古くから黄金比である1:1.618…という比率であるとされています。

黄金比を説明する際に良く用いられているのが、縦と横の比率が1:1.618の黄金比となっている「黄金長方形(Golden Rectangle)」と呼ばれる長方形です。

Golden Rectangle .

Golden Rectangle/Dave3457/CC0/via Wikimedia Commons,Link

私たちの身近にある黄金長方形に近いものとしては、実用書や学術書などでよく書店にある新書判(105mm×173mm)や名刺(55mm×91mm)が挙げられます。

黄金螺旋(Golden Spiral)

黄金長方形にあるすべての正方形の列において、それぞれの角の点をつないでいくと、渦巻うずまき状の螺旋らせんを描くことができます。

これは「黄金螺旋おうごんらせん(Golden Spiral)」と呼ばれています。

FibonacciSpiral

Golden Spiral/Jahobr/CC0/via Wikimedia Commons,Link

台風の雲の渦やひまわりの種の並び方、オウムガイの殻など自然が作り出した造形美として、黄金螺旋に似ているものが数多くあります。

黄金比を用いた代表的な品々

黄金比を用いているとされる、有名な美術品や建造物も数多くあります。

建造物として有名なものは、スペインのバルセロナにあるサグラダ・ファミリア大聖堂(1882年〜2026年完成予定)、フランスのパリにある凱旋門(1836年)、エジプトのギザにあるピラミッドなどがあります。

Arc de Triomphe at sunset

凱旋門,Arc de Triomphe,Udit Kapoor, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons,Link

美術品としては、紀元前2世紀ごろ古代ギリシアで制作された彫刻の女性像である「ミロのビーナス」、イタリアの美術家レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた油彩画である「モナ・リザ(1503年~1519年頃)」などが挙げられます。

Golden spiral on Joconda

Mona Lisa/Ellywa/CC BY-SA 4.0/ via Wikimedia Commons,Link

現代でも黄金比は数多くのデザインに生かされており、企業のロゴなども詳しく調べてみると、黄金比を参考にしながらつくられていることがあります。

例えば、アップルやグーグル、ペプシコーラのロゴには黄金比が活用されています。

黄金比をファッションに活かす

黄金比は、ファッションにおける人の見た目にも活用できます。

黄金比を用いて、ある一定の長さを分割したものが黄金分割(GoldenMean)ですが、「5:8」の割合で分割されると、視覚的にバランスがよく安定感のあるシルエットとなります。

黄金比のファッション

画像引用:隈部恵子(1987)『ファッションデザインの技法』源流社

単なる直感的な美しさだけではなく、5:8が理想的であるのにはきちんとした理由があります。

5:8は、5:8=8:13という比例式で示すと、外項が5×13=65、内項が8×8=64と外項と内項の掛け算がほぼ同じ値となることがわかります。

つまり、上記の画像で示している通り、視覚的に安定したバランスをとることができるのです。

ファッションと黄金分割

黄金分割を用いたファッションの応用例については、隈部恵子(著)ファッションデザインの技法』に詳しく記載されています。

黄金比のファッション

画像引用:隈部恵子(1987)『ファッションデザインの技法』源流社

上記のワンピースのように複雑なバランスになっている服装でも、5:8の割合が視覚的に安定感のあるものとなっています。

黄金比のファッション

画像引用:隈部恵子(1987)『ファッションデザインの技法』源流社

上記画像は、巾の長さやポケットの大きさで、5:8を表現しています。

黄金比のファッション

画像引用:隈部恵子(1987)『ファッションデザインの技法』源流社

上記画像は、ブラウスとスカートの黄金分割です。右側は、ベルトを締めることによって、シルエットのメリハリ出ているのがよくわかります。

黄金比のファッション

画像引用:隈部恵子(1987)『ファッションデザインの技法』源流社

上記画像は、襟付きのコートは、衿が明いている部分の長さとウエストまでの長さにに黄金分割が応用されています。

黄金比のファッション

画像引用:隈部恵子(1987)『ファッションデザインの技法』源流社

上記画像のスカートは、裾に入る3本の縫いひだ(タック)とスカートの裾の端を折り返した部分(ヘム)までの長さに黄金分割が見られます。

黄金比のファッション

画像引用:隈部恵子(1987)『ファッションデザインの技法』源流社

上記画像は、非対称的に(アシンメトリー)自然なひだ(ドレープ)があるトップスとスカートの割合が8:5となっている複雑なものです。右側は、スカーフを使用することで、黄金分割が表現されています。

黄金比、黄金分割を意識するだけで見せ方が変わる

ファッションにおいて、バランスの良い服装というのは感覚ではなんとなくわかっているようでも、言語化できない場合が多いと思います。

黄金比、黄金分割という考え方を知っているだけでも、コーディネートを考える上で大きな違いが出てくることでしょう。

【参考文献】

  1. 隈部恵子(著)ファッションデザインの技法
  2. スコット・オルセン (著)『黄金比 自然と芸術にひそむもっとも不思議な数の話

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