鉄漿は、古くから使用されてきた鉄媒染剤の一つです。
鉄漿は、中国名で、古代において、黒染めの方法として中国から伝えられたものと考えられます。
タンニンに反応すると黒く染まるため、鉄漿を、タンニンが多く含まれる五倍子とともに用いたものがいわゆる「お歯黒」になります。
鉄漿成分は、さまざまな形の酢酸鉄の混合物になり、鉄イオンとしての作用が主として媒染に影響してきます。
染色・草木染めにおける鉄漿(てっしょう)
鉄漿を作る方法には、様々な方法があります。
鉄漿のつくり方
『紺屋茶染口伝書(上)』には、鉄くず6分、酢9分の割合で煎じてから、そのまま2日間放置するとあります。
江戸時代の『諸色手染草』(1772年)には、鉄くず50匁、水1升、酢5合の割合で煎じて、ほぼ半量まで煮詰めるとあります。
『日本染法(第八十項)』には、鉄切くず3貫目、糯米4合に水を加えて煮立て、その中へ熱した酒3合を加えるとあります。
『前田雨城氏からの伝』には、やわらかい米粥(よく煮た米)に適当量の鉄銹(鉄錆)を加え、瓶に入れて綿栓をし、暗所で3ヶ月〜6ヶ月保存するなどとあります。
鉄のさびがしっかり液に溶けて、鉄片の表面がきれいなり、うまくできれば長期間変化せず、いつでも使用することができます。