燕をモチーフにした文様(模様)である燕文は、日本や中国をはじめとする東アジアの工芸品などのデザインに古くから用いられてきました。
燕は古来より、春の訪れを告げる鳥として親しまれ、縁起の良い象徴とされてきました。そのため、燕文には単なる装飾としてだけでなく、幸福や繁栄を願う意味も込められました。
デザインにおける燕・燕文(つばめもん)

燕文(つばめもん)が彫られた伊勢型紙
燕文は、中国や日本の陶磁器(粘土や陶石を原料に焼かれた器)に見られます。
江戸時代に作られた小袖の模様表現における小紋染めや絵絣などでは、燕が羽ばたく姿をリズミカルに配置することで、躍動感や軽やかさが表現されました。
「小袖 茶縮緬地燕鯉水辺風景模様」には藤花の間を燕が飛び交い、菖蒲の咲く波間を鯉が泳ぐ初夏の情景が表現されたり、「浅葱地柳に燕文金襴単狩衣」には、浅葱色の紋絽地(絽に文様を織り込んだ生地)に、柳の糸をすり抜けて飛び交う燕がデザインされています。
伊勢型紙の彫刻モチーフにおいても、燕は多く用いられてきました。

燕文(つばめもん)と七宝文(しっぽうもん)が彫られた伊勢型紙

燕文(つばめもん)と七宝文(しっぽうもん)が彫られた伊勢型紙
現代においても、燕文は生活の中で自然や季節感を楽しむためのデザインとして親しまれています。