化学繊維を製造するためには、まず最初に原料から鎖状の高分子を溶剤に溶解するか、加熱して水あめのようなドロドロの状態にします。
鎖状の高分子は、原料のセルロースを反応させ改質したり、石油や天然ガスなどの繊維と無縁の原料から合成したりして作ります。
そしてドロドロの高分子を、ノズルといわれる口金(くちがね)の穴から押し出して固めて繊維にする「紡糸」の工程が必要になります。
化学繊維の糸をつくるための紡糸方法は、大きく分けて①湿式紡糸、②乾式紡糸、③溶融紡糸の3種類あります。
他にも、液晶紡糸法、ゲル紡糸法、エマルジョン紡糸法などさまざまな化学繊維の紡糸方法がありますが、今回は上記の基本的な3種類について紹介します。
目次
湿式紡糸法
原料の高分子を溶剤に溶かしたドープと呼ばれる液をノズルに通して、凝固液の中へ押し出して繊維にします。
高分子の溶液が凝固液と反応する場合と、脱水か脱液されてドープに溶解している高分子が凝固する場合とがあります。
高分子の溶液が凝固液と反応する場合は、レーヨン、ポリノジックなど。脱水か脱液されてドープに溶解している高分子が凝固する場合は、キュプラ、ビニロン、アクリル、ポリウレタンなどの繊維がつくられます。
乾式紡糸法
原料の高分子を溶剤に溶かしたドープを、ノズルを通して加熱した空気中へ押し出し、溶剤を蒸発させて繊維をつくります。
アセテートとポリ塩化ビニル繊維が、乾式紡糸法によってつくられる代表的な繊維です。
ビニロン、アクリル、ポリウレタン繊維などは、湿式紡糸と乾式紡糸のどちらの方法でもつくられています。
乾式紡糸法では、500〜600m/分の速度で繊維がつくられます。
溶融紡糸法
原料の高分子を加熱して溶かした溶融液を、ノズルを通して空気中に押し出して、空気または水で冷却して固めることで繊維にします。
ナイロン、ポリエステル、家庭用ラップや食品包装フィルムなどになるビニリデン繊維は、この溶融紡糸法によって繊維がつくられます。
ポリ塩化ビニル繊維は、乾式紡糸法に加えて溶融紡糸法でもつくられます。
紡糸された繊維を加工する
上記に示した3種類の代表的な紡糸法などによって紡糸された繊維は、繊維を構成する高分子の配列を変えたり、適度な強さと伸縮性をもつ繊維にするために、適正な温度の空気中や液中で何倍も引き伸ばされます。
また、高温で熱を加えて寸法を安定化させたり、熱処理によって結晶化の度合いを増加させて繊維の強さと縦弾性係数(ヤング率)を増大させて、引っ張りによる伸びを減少させたりできます。
化学繊維は、文字通り化学的な繊維であり、人類の知恵がつまったものです。
技術革新によって、さまざま新しい繊維が開発されているので、おもしろい繊維を本サイトでも取り上げていきます。
参考文献:『21世紀へ、繊維がおもしろい』