楓が色づいた紅葉を愛でる様子は、古くから歌や絵画に表現されています。
楓を模様化(文様化)した楓文は、掌状(指を開いた手のひらの形)の葉の美しさと、秋に見事に紅葉することから染織品のデザインに多く用いられてきました。
デザインにおける楓模様(かえでもよう)・楓文(かえでもん)

楓(かえで)・楓文(かえでもん)が彫られた伊勢型紙

楓(かえで)・楓文(かえでもん)が彫られた伊勢型紙
楓という名前は、葉の形が蛙(カエル)の手に似ていることから「かえるで(蛙手)」と呼ばれていたものが、後に「かえで」と呼ばれるようになったとされます。
鎌倉時代の絵巻物にも楓がみられ、その後の各時代の染織品においてさまざまな楓模様が用いられました。
重要無形文化財の小袖である「淡浅葱地葵紋付楓重文辻ケ花染小袖」は、徳川家康の遺産である「駿府御分物」として尾張家に譲られた家康着用衣類の一つです。
楓を4~5枚重ねて一つの模様(文様)とし、藍の絞り染めで染められています。
流水と楓が一緒に描かれたものは「竜田川図」などと呼ばれますが、これは『古今和歌集』に掲載される在原業平によって読まれた歌「ちはやぶる神代もきかずたつたがは から紅に水くくるとは」がもとになったと言われています。