草木染めにおいて、鼠色ほど、多くの植物で染められる色もありません。
鼠色にも、色の幅があり、青味、紫味、赤味、茶味などを帯びた鼠色があり、それぞれ多くの色名がつけられました。
草木染め・染色における鼠色(ねずみいろ)
江戸時代の色名を見ると、〇〇鼠というように鼠色系統の色名がたくさんあります。
藍と染め重ねて、湊鼠(薄い青緑みの鼠色)、藍鼠(藍みをおびた暗い鼠色)、藍御納戸(青味の強い納戸色)、鉄色(青みが暗くにぶい青緑色)などの色もありました。
平安時代には、鈍色といわれた鼠色を染めるために、櫟や楢、杏、柳、栗、栃など様々な植物が使用されました。
薄鈍といわれた灰色や銀鼠(銀色のようなほんのり青みを含んだ明るい灰色)などの薄色を染めるためには、白樫、臭木、白山吹、薔薇、箱根空木などが主に使用されました。
藍染の原料となる蓼藍の生の茎を使用しても、銀鼠が染まります。
赤味のある鼠色
桜や欅の緑葉や樹皮、椿の落花で染めると赤みのある鼠色になります。
紫味のある鼠色
五倍子、櫨、木斛、椎、車輪梅、水木、荒地待宵草、丁子蓼などでは、紫味の鼠色が染まります。
鼠色を染めるためには、基本的に鉄で媒染し、植物の持つタンニンが発色することで色が変わるのです。
植物の種類によって、違った色合いになるのが非常に面白いです。