ガマズミ(学名Viburnum dilatatum)は、レンプクソウ科(スイカズラ科)ガマズミ属で樹高が2〜3mになる落葉樹で、日本各地で自生しています。
Viburnumはラテン語でガマズミの古名に由来するといわれ、dilatatumは「広がった」の意味があり、葉っぱの形に由来します。
江戸時代の薬物についての知識をまとめた本(本草書)には、ガマズミの漢字は、「莢蒾」と記載されています。
莢蒾の莢は「豆類の種子を包む殻」を表し、「蒾」は「染め」を意味します。
ガマズミの特徴
4月から6月ごろに、若い枝の先に多数の白い花を咲かせます。
秋になると果実が赤く熟し食べることもでき、霜が降り始める晩秋の頃に果実の表面に白っぽい粉がふくタイミングで甘みが増します。
果実酒にすると赤みのあるワインのような色になり、ほどよい酸味があり味も良いことで知られています。
ガマズミには、ヨソゾメ、ヨツズミなど地方によってその土地の方言でさまざまな別名がありましたが、このことから古くからガマズミが人々との深い関わりがあったのがわかります。
ガマズミ属の植物は、熱帯から亜熱帯地域、南米のアンデス山脈など世界中に分布しており、特に北米とアジアにおいて種類が多いです。
染色・草木染めにおけるガマズミ
染料としてのガマズミについては、上村六郎(著)『民族と染色文化』の「江戸時代の染料とその染色」の項目において、「よそぞめ 実にて退紅色を染む」とあります。
退紅色は、色あせたような淡い紅色なイメージです。
山崎青樹著『草木染の事典』には、「樹皮および緑葉を染色に用いる。アルカリ媒染で赤茶、銅媒染で茶色、鉄媒染で黒鼠を染める」とあります。
【参考文献】『月刊染織α1983年6月No.27』