普段私たちが着ている服を考えてみればよく分かることですが、私たちの身近にある繊維は、伸びたり縮んだりします。
これは、一般的に繊維を構成する高分子(ポリマー)の動きによるものです。天然の高分子は、構造が複雑で、合成された高分子は簡単な構造で組み立てられています。
合成方法によって、繊維の性質がさまざま変わってきます。
無機繊維と金属繊維以外の化学繊維も、「高分子」と呼ばれる細長い形をした分子でできているのです。
伸びたり縮んだりと、高分子(ポリマー)でできている繊維の代表的な性質について挙げてみます。
繊維が軽くて、強いのはなぜか?
繊維といえば、軽くて強いという性質があります。
繊維は、炭素、水素、窒素、酸素などの原子が主成分となっている一本一本の高分子が鎖のように絡み合っていたり、ぴったりと並んだりして形づくられています。
分子の間には、ゆるみがあり、高分子の鎖が部分的に回転できるようになっているので、その程度によって強度に違いが出てきます。
分子間のすき間や緩みのある方が強度が弱くなり、分子同士がしっかりと繋がっていると強度が強いというイメージです。
繊維の強度については、『有機物性化学 第3回繊維・高分子構造材』という資料には、下記のようにあります。
1. そもそも繊維の分子自体が切れにくく丈夫
※ほとんどの分子は同じような共有結合をもつので、この面ではそれほど強度に差は無い。ただし単位面積(単位太さ)あたりで考えると、あまり幅のある分子は向いていない.2. 結晶性が高い
分子が剛直で,枝分かれがあまり無く、隣接する
分子と相互作用しやすいようなものが好ましい。3. 隣接分子との間の引力が強い
そもそも、高分子材料で弱いのは分子「間」での結び付き。ここを強くすると、強度が上がる。
繊維1gあたりの強さでいうと、金属材料よりも軽くて強いものがつくれます。
繊維が比較的長持ちしやすいのも、分子の結びつきが強いからとも言えるのです。
繊維が伸び縮みするのはなぜか?
繊維が伸び縮みする性質は、高分子の鎖をつくっている原子間の結合における回転のしやすさが大きく関わっています。
分子間にゆるみがあり、鎖の回転しやすいものほど、伸び縮みしやすく(弾性が大きい)なります。
温度変化は、伸び縮みのしやすさに大きく影響してきます。
繊維が加工しやすい理由
繊維を構成する高分子の鎖は、一本ずつが細長い分子でできているので、熱や溶ける物質を溶かす液体物質(溶媒)によって、変形させることができます。
いったん形を作ってしまえば、分子の鎖同士が互いにくっつきあっているので、加工がしやすくなります。
繊維の性質に関しては、繊維を構成する高分子の分子構造が決まれば、物理的性質が決まるというような単純な話ではなく、なかなか複雑です。
高分子の分子量と分子構造には多様性があり、分子間のたわみ易さや、分子同士の絡み合いの強さによっても大きく影響があります。
同じ高分子素材からできている繊維でも、性質が多様化し、変化に富むというので、繊維というのは非常におもしろいです。
【参考文献】『21世紀へ、繊維がおもしろい』