『ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』のなかで、組織のマネジメントの成功例として、FAVIというフランスの自動車部品メーカーが登場します。
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そのFIVIには、組織が存在する根本的な目的が二つあるそうです。一つ目が、「職の機会が少ない北部フランスの田舎町アランクールに、十分な雇用を生み出すこと」。
二つ目が、「顧客に愛を届け、愛を受け取ること」だそうです。
顧客にどうやって愛を届けるか
「顧客に愛を届け、愛を受け取る」というが組織が存在する理由として挙げられているのが、すごくおもしろい。
利益をあげることよりも、まず第一にお客さんに愛を届けることがミッションとして前に出ているのです。
ただ、言葉では簡単に言えますが、愛を届けることってほんとうにむずかしいことなんじゃないかと。そもそもビジネスとは、無関係に思えるのが「愛」という言葉です。
では、ビジネスの場面で顧客にどうやって愛を届ければいいか。
お客さんに対して、いきなり「あなたを愛しています、だから私の商品を買ってください」なんていったら、完全にやばい人ですし、そんな表面上の愛を伝えても相手には全く響かないでしょう。
個人的には、自らが生み出す商品に対して一生懸命「愛」をのっけてあげれば、きっとお客さんにも伝わるのではないかと思います。
徹底的にこだわり抜いて、顧客が期待する以上のものを提供するという姿勢。そして、商品のクオリティだけでなく、丁寧でまたお願いしたいと思ってもらえるような顧客に対するサポートなどなど。
自動車部品メーカーのFAVIが、「愛を届けた」一例が、『ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』のなかでは紹介されています。
工場作業員は製品をただ顧客に届けるのではない。自分たちの心を込めた製品を送るのだ。数年前のクリスマスの時期、FAVIのある作業員は、余ったブリキを使ってサンタクロースとトナカイの小さな立像をつくった。まるで子供がビンにメッセージをいれて海に投げ込むように、彼は最終製品の箱の中にその像を入れた。いつか、だれかがそれを見つけてくれることを夢見て。
その後、ほかの作業員もそのアイデアを採用し、クリスマスのとき以外にも、フォルクスワーゲンやボルボの工場で組み立て作業に携わっている人へのささやかな愛情の印として、積荷の中に時々ブリキの像を入れておいた。受け取る側は、箱を開けると像が入っていることに気づくという仕組みだ。
FAVIの部品製造の作業員が、お客さんだけではなく、自社の部品をつかって組み立てをする作業員の人々に対しても「愛を届ける」姿勢を持っているというのが、非常に印象的です。
顧客からも愛を受け取る
人間関係においては、一方的な行き過ぎた愛は、ストーカーとして受け手に認識される可能性があります。
ビジネスにおいても、一方的に顧客に愛を届けていたら、それは自己満足の愛情でしょう。きっとそれでは、顧客は離れていく。なぜ、顧客から愛されないかを客観的に分析しなくてはなりません。
人から愛されることがむずかしいように、ビジネスにおいても顧客から、商品、サービス、ブランドを愛してもらうためには、まず自らが商品を愛さないといけないですし、愛してもらえるような努力をしないといけません。
愛するより、愛されるほうがむずかしい。これはビジネスでも同じことなのでしょう。
建前をつくろったり、うまくごまかしていれば、一時的に愛し、愛される関係を築き上げることができるかもしれません。
でも、それでは意味があまりない。継続的に良い関係を築き上げることが、なりよりも重要なことだと思います。
FIVIが組織が存在する根本的な目的として、「顧客に愛を届け、愛を受け取る」という言葉を採用している点に、とても意義があるように感じます。
そしてそのミッションが、従業員に浸透しているのがすばらしいですね。