化粧品に使用される色材は、大きく下記の5種類に分類できます。
- 有機合成色素
- 無機顔料
- 天然色素
- 真珠光沢顔料
- 高分子粉体
化粧品は、人の肌に直接使われるものなので、高度な安全性が求められますが、そこに使われる色材についても、厚生労働省令によって法的に規制されています。
目次
1.有機合成色素
日本では、化粧品に使用できる有機合成色素の種類は限定されており、用途や使用する身体の部位によっても、さらに限定されています。
有機合成色素は、①染料、②レーキ、③有機顔料の3種類大別することができます。
①染料
染料は、水に溶ける水溶性染料と、油分やアルコールなどに溶ける油溶性染料があり、どちらも溶けた状態で発色しています。
特徴としては、溶けた状態で発色するので、透明で鮮やかな着色ができる一方、熱、酸、アルカリ、光などの厳しい環境下では分子が破壊されて退色します。
基礎化粧品の化粧水や乳液などのクリームを中心に、多くの化粧品に使用されています。
②レーキ
レーキは、水溶性の染料を化学的な処理によって水に溶けない粉末の状態にしたもので、色合いの鮮やかさが特徴的です。
ただ、アルカリや光、熱などに対する安定性はあまりよくなく、退色や変色の原因となることがあるので、使用できる化粧品は限られています。
③有機顔料
有機顔料は、水、油、アルコールなどに溶けない色を持った粉末で、青から緑色系の顔料であるフタロシアニン系や、青色のインジゴ系、赤色のアゾ系などがあります。
口紅やマニキュア、アイシャドー、チークなどの多くの化粧品の着色に不可欠な色材で、レーキよりも着色力や化学的な環境下での安定性に優れているため、化粧品に限らず印刷やプラスチックの着色など、私たちの生活のなかで多くのものの彩色に使用されています。
2.無機顔料
無機顔料は、鉱物顔料とも言われており、日本においては化粧の原点とも言われる赤化粧には、酸化鉄を含む天然の鉱物も使用していたようです。
天然のものは、肌に対して有害な不純物を持つものがあるので、現在では品質が安定している合成された無機顔料が化粧品に使われています。
無機顔料の特徴としては、有機色材には、鮮やかさでは劣りますが、水や油等、各種の溶媒に溶けないという優れた性質をもっていて、安全性も高く、化粧品以外の多くの生活日用品に使用されています。
化粧品に使用されている無機顔料は、①着色顔料②白色顔料③体質顔料の3つに大別することができます。
①着色顔料
着色顔料は、多くの化粧品の色を決める主要な色材であり、組み合わせと白色顔料や体質顔料とのバランスがより良い色づくりの決め手となります。
赤酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄、群青、紺青、酸化クロム、雲母チタンなどが挙げられます。
②白色顔料
白色顔料は、白さの調整という化粧品の色調設計における中心をなす色材です。
二酸化チタン、酸化亜鉛などが挙げられます。
③体質顔料
体質顔料は、多くが白色ですが、色の濃度を調節したり、肌に対する感触を決める大切な色材です。
マイカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化バリウムなどが挙げられます。
3.天然色素
天然色素は、動物や植物、微生物の働きなどから得られ、古くからや食用、薬用、染色、化粧品などに利用されてきました。
多くの天然色素は有機合成色素に比べると、熱・光・酸・アルカリなどに対する安定性に劣り、天然であるがゆえに品質や供給面での不安定性があるので、現在の化粧品においては、京紅などごく一部のものに使用されています。
代表的な天然色素は、①カロチノイド系、②フラボノイド系、③アントラキノン系の三種類に大別できます。
①カロチノイド系
カロチノイド系は、ニンジン・トマト・エビ・カニなどに含まれている橙色〜黄色の色素で、バターの着色に使われているβカロチンが有名です。
化粧品では一部の乳液やクリームの着色に使われています。
②フラボノイド系
フラボノイド系は、花・シソ・カブ・ぶどうの皮などに含まれる色素で、紅花から抽出される赤色系の色素であるカルサミンが有名です。
現在でも、一部の口紅やチークに配合されているようです。
③アントラキノン系
アントラキノン系は、西洋アカネ・紫根・ウニなどに含まれる色素です。
サボテンに寄生するオスのエンジ虫を乾燥させてから得られる抽出物であるコチニールは、鮮やかな赤色として口紅の一部に使用されたりします。
4.真珠光沢顔料(パール顔料)
1965年、アメリカの化学メーカーであるデュポン社によって「二酸化チタン被覆雲母」が開発されて、真珠が持つ光沢感が顔料として、人工的に安定供給されるようになりました。
光沢感やメタリック感といった付加価値を表現するのに優れており、口紅やアイシャドーなど多くの化粧品に配合されています。
これらは真珠光沢顔料と呼ばれますが、パール材とも言われるように「光沢感がある白」が基本的な色調になっています。
5.高分子粉体
高分子粉体は、白色に近い色調をもっていますが、色合いには大きく影響は与えないけれど、球のように丸い形をした粒子の性質を生かして、なめらかな肌触りを実現するために主に使われています。
洗浄やマッサージ効果を高めるためのスクラブ剤として、洗顔料やボディークリームに使用されたりもしています。
素材としては、ポリエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ナイロンなどが使われており、技術の発達によってさまざまな高分子粉体が開発されています。
参考文献:『色彩から歴史を読む』