染色におけるカチオン性とアニオン性


染色においては、イオン性や非イオン性など、「イオン」という言葉がよくでてきます。

アニオン性とカチオン性

物質の最小構成単位は分子で、分子は原子の集まりから成り立っています。

原子の中心には原子核があり、その周りを電子が回っています。

電子は「マイナス(−)」の電荷を持っており、その数は原子の種類によって決まっています。

一方、原子核の中にはその電子の数に見合った「プラス(+)」の陽子があり、原子全体として「プラス(+)」と「マイナス(−)」が釣り合っています。

高校の化学で学びますが、一番簡単な原子は水素「H」で、電子も陽子も1つずつ持っています。

原子のなかの電子は、離れていってしまうものもあり、電子に出ていかれた原子では「プラス(+)」と「マイナス(−)」の数が釣り合わなくなってしまい、出ていった電子の分だけ、原子は「プラス(+)」の方が大きくなります。

このように「プラス(+)」の方が大きくなった状態のものが、カチオン(cation「プラスイオン」)です。

反対に、他の電子にくっついてこられた原子は、「マイナス(−)」の方が大きくなります。

これがアニオン(anion「マイナスイオン」)です。

ただし、カチオンもアニオンも1つの原子だけでなく、いくつかの原子の集まりや分子の中で特定の原子が他の原子と結合したままイオンになるものもあります。

カチオン(プラスイオン)とアニオン(マイナスイオン)は、互いに引き合いペアを作ります。

このペアをイオン結合(lonic bond)と呼んでいます。

イオンは、水と相性が良いため、イオンの周りを水の分子が取り囲んでしまうため、水に溶けた状態ではペアが存在せず、それぞれのイオンに分かれた状態です。

一方、染料やアルコール、界面活性剤などの有機化合物は、基本的にイオンではなく、お互いの原子の持っている電子を共有するという形でペアを作っています。

このようなペアを共有結合(covalent bond)と呼び、水に溶けても水分子によってバラバラにされることはありません。

例えば、お酒のエチルアルコールは水によく溶けますが、イオンになることはないのです。

この性質を持つものは、非イオン性(nonionic)であるといいます。

しかし、有機化合物でもその分子の一部にイオンペア含んでいると、水の中でその部分がイオンに解離します。

例えば、酢酸などの有機化合物はその性質があり、イオン性(Ionic)と呼んでいます。

同じイオン性でもアニオン性になるものとカチオン性になるものがあり、また非イオン性のものもあるのです。

アニオン性染料(Anionic dyes)0

イオン性の染料の中で、水に溶けてマイナス(−)のイオンになる染料をアニオン性染料といいます。

代表的なものに、酸性染料があります。

カチオン性染料(Catlonic dyes)

アニオン性染料とは逆に、水に溶けてプラス(+)のイオンになるのがカチオン性染料です。

塩基性染料の一種であるカチオン染料は、合成繊維であるアクリル繊維を染めるために開発されました。

鮮やかに発色するものが多く、堅牢度も良好です。

非イオン染料(Nonionic dyes)

染料分子の中にイオンペアの部分を持っていないものを非イオン性染料といいます。

非イオン性染料の大部分は、分散染料です。

分散染料はポリエステルやナイロンなどの合成繊維やアセテート繊維に対する染料で、水に溶けない不溶性であるため、各種の分散剤で水に溶かして使用されます。

【参考文献】『月刊染織α1984年12月No.45』


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