サフラン(学名 Crocus sativus)は、アヤメ科クロッカス属の植物で、そのめしべを乾燥させた香辛料もサフランと言われます。
サフランはクロッカスの仲間で、球根で生長する植物です。
食用のものをサフラン、観賞用のものをクロッカス(ハナサフラン)と分けたり、秋に花を咲かせる種類をサフランと呼び、春に花を咲かせる種類をクロッカスと呼んで区別することがあります。
サフランは、その大きな花びらと、花の中心部に目立つ鮮やかな黄色のおしべと紅赤の柱頭をつけるめしべが特徴的で、1つの花に3本しかないその紅赤の柱頭(めしべ)を1つずつ手で摘み取って乾燥させるため手間がかかり、古くから非常に高価な香辛料として知られていました。
3000年以上前から香辛料、着色料、香味料として、世界中で幅広く利用されてきました。
日本において、サフランは江戸時代に漢方薬として日本に伝わり、明治半ば過ぎには大分県竹田が名産地となりました。
染色・草木染めにおけるサフラン
サフランの染色には、紅色のめしべを乾燥させたものを使用します。
サフランの色素は、水溶性のため、ムラになりにくい性質があります。
シルクの糸1kgを染色する場合は、以下のような流れになります。
①精錬されたシルクの糸を、家庭用の「食酢」を使用して媒染します。
弱酸性を好むため、酢酸より「食酢」の方が良いようです。
シルク糸1kgを染める場合、50℃のお湯80リットルの中に、「酢」を160cc入れて媒染液を作り、媒染液にシルク糸を浸して先媒染します。
②サフラン染めに必要な色素の抽出は、サフラン150gを20リットルの熱湯に入れて、約40分間煮て1番目の煎汁をとります。
1番液を別の容器に移してから、さらに熱湯を20リットル入れて約40分間サフランを煮て2番目の煎汁をとります。
③1番液と2番液を混ぜ、約40リットルの濃い染液に80リットルの水を入れて薄めてから、この中にシルク糸を浸して、50℃で約50分間染色します。
すぐに水洗いするのではなく、染液が冷えるまで一晩浸して置く場合もあります。
④染め上がってから水洗いする前に、もう一度「酢」で作った媒染液に浸けてから水洗いをします。
染めたい目標の色目によって、染液の濃度や染色時間を調節していく必要があります。
サフランに含まれる色素
サフランに含まれる色素成分は、クチナシ黄色素と同じカロチノイド色素のクロシンです。
サフランの主な成分は、クロシン(crocin)、クロセチン(Crocetin)、ピクロクロシン(picrocrocin)、サフラナール(Safranal)などで、サフランの色はカロテノイド配糖体構造を持つクロシン、クロセチンに由来するとされています。
サフランの色素は水に溶けやすく鮮やかな黄色になるため、古来からフランス料理のブイヤベースやスペイン料理のパエリヤ、インド料理のサフランライス、モロッコ料理「クスクス」など、日本でもなじみがある料理に着色とスパイス用として非常によく使われています。
【参考文献】『月刊染織α1985年No.56』