黄金花(学名 Scutellaria baicalensis Georgi)は中国北部からシベリア、モンゴルや朝鮮半島などに分布しているシソ科の多年草です。
7月から8月ごろに枝先に花穂をつけ、青色や紫紅色の唇形花が美しいのが特徴的です。
地中に埋まっている根っこ部分は、外皮が暗褐色ですが、内部は美しい黄色です。
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染色・草木染めにおける黄金花(こがねばな)
黄金花は、現在でも染料としてネットで購入できます。
錫媒染で、淡黄褐色、アルミやクロム媒染で黄褐色、鉄媒染で黒褐色に染まり、染料としての知名度は低いですが、日光堅牢度は良いとされています。
上村六郎氏の『民族と染色文化』によると、幕末の奄美大島の様子について記録された民俗誌である『南島雑話』には、奄美大島の染料として黄金花が記載されています。
カナギ即ち芩で染めるとあり・・・・・・芩は黄芩のことである・・・・・・その根を用いて実験した結果によるとこれは非常に優秀な染草の一つである。その染色効果はハマナスとよく似ている。石灰媒染で濃赤褐色となり、鉄媒染で褐黒色となる。ただ、明礬媒染だけはハマナスと著しく異なっていて、ハマナスは黄褐色であるが、この方は美しい黄色である
上記の引用では、染料としての黄芩の価値がよく理解できます。
黄金花(こがねばな)の薬用効果
生育年数が2〜3年経った根っこを秋に堀り、水洗いし外皮を削ぎ落し、天日で乾燥させたものが生薬の黄芩となります。
黄芩は、中国最古の薬物学書である『神農本草経』に、体力を養う目的の薬(中品)として記載されています。
『神農本草経』の特徴として、1年の日数と同じ365種類の植物・動物・鉱物が薬として集録されており、人体に作用する薬効の強さによって、上薬(120種類)中薬(120種類)下薬(125種類)というように薬物が3つに分類されている点があります。
平安時代に編集され、日本最古の薬物辞典である『本草和名(918年)』にも、黄芩の中国における別名が多く挙がっています。
生薬は古くから輸入されていたと考えられていますが、平安時代にまとめられた三代格式の一つである『延喜式(927年)』には、尾張国(現在の愛知県西部)から14斤、近江国(現在の滋賀県)から10斤等の黄芩が毎年朝廷に貢進した記録がありますが、これが大陸からのものなのか、国産なのかははっきりしていません。
黄芩(おうごん)の成分
黄芩には、フラボン誘導体のバイカリンやオウゴニンなどが含まれ、解熱や充血性の炎症を除いたり、下痢や腹痛などの症状に合わせて漢方で配合されたりします。
黄金花(こがねばな)の歴史
黄金花の名前は、根っこの内部が黄色いことから由来しています。
また、葉っぱがシダレヤナギに似ているところから、コガネヤナギという別名もあります。
日本における黄金花の栽培の歴史については、1726年(享保11年)に、徳川幕府が作った小石川御薬園には朝鮮産の黄芩があった記録があり、生薬の生産もされていました。
現在、日本において生薬として黄金花の栽培はほとんどなく、使用する場合は中国や韓国からの輸入品になります。
黄金花(こがねばな)と呼ばれる別の植物、都草(みやこぐさ)
黄金花と呼ばれる植物に、マメ科の多年草である都草(学名 Lotus japonicus)があります。
山野に自生し、春から夏にかけて鮮やかな黄色の花を咲かせます。
この植物は、植物染色における名著『染料植物譜(後藤捷一・山川隆平著)』に「葉はアルミナ媒染木綿を橙黄色に染むべし」と染料植物の一つに挙げられています。
【参考文献】『月刊染織α1982年9月No.18』