裂き織りとは、もともと着古された着物であったり、使い込まれた布を細かく裂いた「裂き布」を緯糸に織り込んだ平織りの織物のことです。
織物は、経糸と緯糸が互いに交差しあってできる布ですが、織り込もうと思えば、大抵どのようなものでも緯糸として使用できます。
例えば、和紙やイネ科の多年草である葭、ヤシ科のツル性植物である籐、木の皮などを糸にして緯糸に織り込んでいる織物などさまざまあります。
裂き織りは、日本だけではなく、スウェーデンやアメリカ、スペインなど海外でも行われていました。
日本における裂き織りの起源はよく分かっていませんが、その分布が東北地方や佐渡、能登、丹後、隠岐(島根県隠岐諸島)、中国地方の山地などにみられ、主に日本海側沿岸の地域を中心としているのが特徴的です。
目次
なぜ裂き織りが生まれたのか
一見すると面倒くさそうな裂き織りですが、これが生まれたのには理由があります。
現代と比べるとものがなかった時代、着るものにも人々は大変苦労しており、布はこれ以上使いこめないというところまで、大切に使いこんでいました。
北国では寒さから身を守るための厚手の織物は必要で、保温性を目的に裂き織りが生まれたとされています。
裂き織りは、生活が自給自足に依存し、貧しくてものを自由に買えなかった人々の、物を使えるまで大切にしようという知恵と工夫から生まれた技術なのです。
古く、裂き織りは、地域によって様々な呼び名がありましたが、ある地域ではほいと織り(ほいとは方言で、乞食を意味する)とも呼ばれることがあったようです。
つまり、裂き織りは、貧しさの象徴でもあったのです。
だんだんと人々が欲しい衣類が買えるようになってきた頃に、裂き織りを使用するというのは、周囲から見るとお金のない証しとして見られてしまうこともあったのでしょう。
現在で作られる裂き織りは、もっぱらデザインとしての側面が大きいですが、昔は、ただそうせざるを得なかったという、人々の苦しみも内包していた織物であるということを理解していると、裂き織りに対する感じ方も変わってくるかもしれません。
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裂き織りの方法
裂き織りを織る前に、まず緯糸に織り込む、裂き布を準備する必要があります。
裂き布とは、布を細く裂いてひと続きのヒモ状にしたものです。
古い時代の裂き織りに使用された裂き布の素材は、ほとんどが木綿ですが、現在では裂けるものであれば、使い古された布ではなくとも、なんでも利用できます。
捨てようと思っていた洋服や手ぬぐい、織り込んだらおもしろいと思えるプリント生地を買ってきても良いでしょう。
裂き布の作り方
布を裂く時には、手で裂くか、カッターやハサミなどの裁縫道具を使用します。
裂く効率を考えると、手で裂いた方が意外に速いですし、裂いた感じの味が出るのも手で裂くことのメリットだと思います。
ハサミを入れて裂く部分を作ってから、両手で裂いていき、端までいったら裂き切らないように注意して、交互に折り返してまた裂いていくことで、ひと続きの長いヒモができます。
裂き方に決まりはありませんので、好きなように裂いても問題はありません。
裂き布の裂く幅は、厚手のものを織りたい場合は太く裂き、薄手のものであれば、細く裂きます。
一般的に裂く幅は、5ミリから1cmくらいですが、太くしてみるのも風合いがおもしろくなります。
ゴワゴワした厚手の太い裂き布を作る場合は、8ミリから1cmくらいが標準になります。
必要な裂き布の量ですが、織り上げる布面積の約6倍くらいの量が必要になります。
昔に織られたものは、太く裂かれたものが多いですが、体を保温するという実用的な側面がきちんと考えられていたのです。
裂き織りを織る
経糸に用いる糸ですが、古くは麻や藤、苧麻、麻と科を撚った糸など草や木の皮から採取した繊維が使われていましたが、木綿糸が入手できるようになると、麻から木綿に変化しました。
古い裂き織りの経糸と緯糸を調べることで、木綿以前に織られたものなのか、木綿が普及した後に織られたものなのかを伺い知ることができるのです。
実際に使用する経糸ですが、20番手で3本撚りの綿糸(20/3)を使用すれば、間違いはありません。
経糸を織り機にセットして、裂き布を平織りで織り込んでいきます。
裂き織りにはこうしなければならないといった決まりはないので、自由な発想で、経糸、緯の裂き布をセットして織っていけば良いのです。