藍染に使用できる色素を持った植物は、世界中に100種類以上あるとされています。
藍の色素を持つ植物を科別にすると、マメ、アブラナ、キツネノマゴ、タデ、キョウトウチク、ガガイモ、マツムシソウ、モクセイ、クロウメモドキ、キク、ヒメハギ、ランなどが挙げられます。
日本においては、蓼藍の葉が藍染の原料とされ、沖縄では琉球藍が使用されてきました。
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蓼藍(タデアイ)の種類と色素含有量について
蓼藍のなかにも、さまざまな品種があります。
葉の形や植物の伸び方(成長の仕方)に違いがあったり、花の色が異なるところなど、見分けられるポイントがあります。
例えば、一般的に栽培されている蓼藍の葉の形は、いわゆる普通の形の葉ですが、丸みを帯びた葉の形(丸葉)をしているものや、縮んだような葉の形(縮葉)をしている品種もあります。
蓼藍の品種によって、色素含有量や葉の収穫量が多少違ってくるというデータもあります。
古いデータとなりますが、徳島県が明治30年〜37年(1897年〜1904年)にかけて、すぐれた藍の品種を選出するために、徳島県内で栽培している8品種について比較試験が実施されました。
葉の収量がもっとも多かったのが、順に以下の通りです。
- 小上粉(こじょうこ)
- 百貫(ひゃっかん)
- 両面平張
- 赤茎小千本
- 上粉百貫
- るりこん千本
- じゃんぎり
- 青茎小千本
この調査の結果、小上粉は優れた品種として奨励されたため、大正以降は徳島県内における栽培面積の9割以上をこの種が占めていたようです。
白花種小上粉が葉の収量に優れる
大正9年(1920年)にも、各地の品種の比較試験が行われ、収量が生葉と乾燥葉の状態で比較されています。
結果は明治時代の調査と同じで、一番葉の収量がすぐれていたのが、「小上粉」でした。
小上粉は、大正末期までは赤花種が栽培されていたそうですが、昭和2年~3年頃(1927年〜1928年)に白い花が咲く白花種が発見されました。
白花種は、紅色の花が咲く赤花種よりやや育つのが遅いようですが、色素藍含量、収量ともに優れているとされるため、その後現在まで小上粉はもっぱら白花種が栽培されているようです。
色合いは、白花種が青味が強くなり、紅色の赤花種は赤味が強くなるとされています。
徳島県おける蓼藍の栽培品種
徳島県で明治中期頃に実用的に栽培されていたのは、「青茎小千本」、「赤茎小千本」、「百貫」、「小上粉」の4種だと推察されています。
このうちの、「青茎小千本」は江戸時代から明治中期にかけて最も多く栽培されていました。
葉藍の品質は極めてよく、葉の育ち方がは直立型で、開花時期もやや遅い特徴であったとされますが、青茎小千本は現在に残っておらず、幻の品種となっています。
参照:「徳島県のタデ藍栽培における品種および省力化に関する取り組み」
現在、徳島県で最も多く栽培されている品種は、小上粉の白花種であり、次いで千本が多く栽培されています。
種類によって、葉の形や育ち方(伸び方)、花の開花時期に違いがありますが、現在栽培されている品種においては、それぞれ多少の違いはあれども、大きな差はないともいえます。
小上粉は、千本に比べると、若干開花時期が遅い傾向にあるという点は、刈り取りの面では良い点として挙げられます。
【参考文献】
- 「徳島県のタデ藍栽培における品種および省力化に関する取り組み」
- 「第3章特用作物に関する研究 第2節研究業績 1.藍」