銀杏（イチョウ）は、樹齢1,000年を超えるものもあり、延命長寿の象徴として知られます。

その他にも、葉が全て落ちても次の春には芽吹く生命力から繁栄や家の安泰を意味したり、耐火性があることから、「火伏せの木」として寺社で重宝されたため防火の象徴ともされていました。

そんな銀杏（イチョウ）の葉をモチーフに文様化（模様化）した銀杏文いちょうもんは、古くから染織のデザインに用いられてきました。

デザインにおける銀杏文（いちょうもん）

銀杏文（いちょうもん）,伊勢型紙

銀杏（イチョウ）は、中国から平安時代ごろに渡来していたとされ、寺社の境内などに植えられて神聖視されていました。

銀杏文いちょうもんとしては、室町時代から安土桃山時代の染織品や蒔絵まきえ、能装束のうしょうぞくなどに見られます。

例えば、安土桃山時代に制作されたと考えられる「銀杏葉雪輪散辻が花染胴服いちょうばゆきわちらしつじがはなぞめどうふく」には、銀杏の葉の美しさがデザインされています。

江戸時代には小袖こそでや浴衣などの着物や絵画、陶器や漆器など工芸品の装飾にも銀杏文いちょうもんが多く用いられました。

銀杏文いちょうもんは吹き寄せ文の中に用いたり、特徴的な葉の形から図案構成化されたデザインも作られます。

例えば、葉の先を雪輪にかたどって、模様の中に加える「雪輪銀杏」などが知られます。

銀杏文の特徴

銀杏文いちょうもんの表現方法の特徴としては、扇形に広がる葉を左右対称に図案化するのが基本的な形ですが、さまざまな形でデザインされてきました。

例えば、一枚の葉だけを単独で描いたり、二枚の葉を左右に配置する形は家紋かもんのデザインでもよく見られます。

輪のように放射状に葉をデザインしたり、小さい葉を地紋として連続的にデザインされたりとさまざまです。