効率化によって、非効率なことが注目される時代。経済発展が人々を豊かにするイメージが崩壊した先にあるのは。


哲学者の内山節さんの著書で、『新・幸福論「近現代」の次に来るもの』があります。

本書のなかでは、「経済発展が人々を豊かにしていく」というイメージを私たちは持てなくなってきたと著者の内山さんは指摘します。

以下、『新・幸福論「近現代」の次に来るもの』からの引用です。

戦後には経済の発展が人々を豊かにしていくというイメージが私たちを包んでいた。しかし現在ではこのイメージは遠くに逃げはじめている。経済を発展させようとして低賃金で雇い、解雇が容易な非正規雇用の人々をふやしてきたのがいまの日本である。実際この二十年間に日本の平均賃金は大きく低下している。

さらに「豊かさ」の意味も遠くに逃げていった。高度成長期には、その時代に三種の神器といわれたものをそろえ、家を購入し、子どもを大学に進学させるのが豊かさだった。豊かさは確かなイメージをつくりだしていたのである。だがそんな豊かさのイメージも今では逃げ去っている。だから私たちは豊かさとは何かと迷い、さまざまな模索をつづけている。

「豊かさ」をどのようにとらえるかは、人それぞれです。ただ、好景気を知らない今の若者40代後半以下の世代は、そもそも経済が発展することによって、豊かさを享受したという経験がありません。

ただ、生まれた時にはすでに、世の中に多くのものが溢れているので、それは過去と比べるともちろん「豊か」ではありますが、高度経済成長時のように、経済発展することでもっと豊かになろうというモチベーションをもっている人は間違いなく少ないです。

経済的な豊かさがモチベーションとならないような世代

ものが溢れる経済的な豊かさが、もはや生きることのモチベーションとならないような世代を、尾原和啓という方が「乾けない世代」と呼んでいます。

尾原和啓さんの著書『モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書』には、稼ぐために働きたくない「乾けない世代」に対するアドバイスが書かれていますが、特に共感したのが、非効率であっても、個人が熱狂できるものがビジネスになっていくという部分でした。以下、本書からの引用です。

これからは「他人から見れば非効率かもしれないけど、私はどうしてもこれをやりたい」という、偏愛とも言える嗜好性を、個人がどれだけ大事に育て、それをビジネスに変えていけるかが資本になっていくのです。

日本の人工知能の権威、東大の松尾豊教授が、こんな話を聞いたそうです。「昔の資本は筋肉でした。肉体労働を集約できることが強かった。それが蒸気機関の発明で追いやられて、今の資本は頭脳になった。そして頭脳は人工知能によって効率的な仕事に追いやられて、次の資本は非効率を産業としていく嗜好になっていくのです」。

これを受けて教授は「自分が何を好むのかという情報はこれから価値になります」と語っています。

非効率なことだけど、自分はこれが好きだというものを積極的に発信していくことがこれからはより価値として捉えられていく可能性が非常に高い。

徹底的な効率化によって行き着く先に、非効率なことが産業として注目されるというのは、非常におもしろいことですね。


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