ある一つの言葉から、ものづくりが始まる。『言葉の服 おしゃれと気づきの哲学』


ゼロから何かものをつくるとき、どのような過程を経てデザインが決まり、ものづくりがされているのか。

例えば、「好き勝手に今作りたいものを作ってください」と人からお願いされたらどうでしょうか?

その時は、きっと頭の中から作りたいもののイメージやアイデアを引っ張り出してきたり、写真を参考にしたり、実際に現物を見てみたりなどして、ものづくりをすると思います。それが、一般的なものづくりの始まりでしょう。

この、ものづくりが始まりが人それぞれ違うからこそ、今世の中に出ているものにはそれぞれ個性があるのです。商売におけるものづくりの面から言うとその個性は、他社との差別化となり、強みになります。

ただ、そうはいっても今の時代、個性や差別化を出すというのは非常に難しくなっています。画像を拾ってくれば形を真似することなど容易ですし、それがインターネットのおかげで世界規模でできてしまいます。

そんな、ものづくりで個性を出していくのがますます難しくなっている時代において、上記で述べた、ものづくりが始まる過程において、非常にこだわりと個性を持ったアパレルブランドがあるのです。

「言葉」をきっかけに、ものづくりが始まる

2005年に堀畑裕之さんと関口真希子さんが立ち上げた、matohu(マトフ)というブランドがあります。読み方は、「マトウ」です。

このmatofuと言うブランドは、言葉を非常に大切にしてものづくりを行なっています。

堀畑裕之さんの著書、『言葉の服 おしゃれと気づきの哲学』には、下記のような記述があります。

私たちが服のデザインを始める時にリサーチするのは、ファッション誌の切り抜きでも、流行の音楽やアートや建築でもなく、たった一つの小さな「言葉」である。

洋服をつくるためにまず、言葉をリサーチするということはどういうことなのか。

matohuは、東京コレクションというファッションショーで、年に二回、シーズンのコレクションを発表しています。そのお披露目前に、事前にテーマについての書かれた「言葉」を先にバイヤーやお客さんに届けています。

言葉を先に届けることで、受け取った言葉から「どのような服ができるのか」というような期待感やイメージを膨らませて、会場に足を運んでくれるのです。

「ふきよせ」というテーマの服

本書を読むと、具体的な言葉がさまざま出てきます。そのなかで、特にイメージがつきやすいのが「ふきよせ」という言葉です。

ふきよせ(吹き寄せ)は、さまざまな色や形をした落ち葉が寄せ集まっている様から、野菜の煮物や揚げ物を美しく盛り付けた料理や、松葉や楓の葉などをかたどった干菓子(ひがし)を指して使われたりします。

この言葉が表す「無作為の美しさ」を洋服で表現するために、コレクションでは、残糸をつなぎ合わせて織った残糸織(ざんしおり)、古布を細かく裂いてよこ糸に入れる裂織(さきおり)が取り入れられたようです。

伝えるためだけの言葉ではなく、ものづくりに反映する言葉に

言葉選びの過程では、もちろん、まったくコレクションのアイデアがないの段階から、ある一つの言葉を選ぶということもできるかとは思いますが、大体は、なんとなく次のシーズンでこんなものを取り入れてみたいというような素材や色、技術などのイメージにぴったりと合うような言葉を選んでいるのだと思います。

ただ、そのバッチリとテーマとなる言葉があるとないとでは、大きな違いが出ると思いますし、その言葉の雰囲気が、コレクションに反映されることは間違いありません。

お客さんに伝えるためだけの言葉ではなく、ものづくりにしっかりと反映する言葉になるので、matohuとしては、この言葉選びは非常に重要な仕事なのでしょう。

そして個人的には、その言葉選びにおける抜群のセンスの良さはmatohuの強みだと思いますし、その言葉を表現するためのデザインや素材に関しても、こだわりがすごいなと感じます。

matohuの言葉をテーマにした取り組みは、ものづくりの担い手としては非常に参考になるものがたくさんあるのではないでしょうか。

ご興味ある方はぜひ、matohuのホームページをのぞいてみてください。

matohu: https://www.matohu.com/


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です